天文部「超新星」をくわしく解説!
超新星は星の爆発である。爆発のしかたは二つある。そのひとつは炭素と酸素からできた白色矮星が連星をなしていて、相手の星からガスが徐々に流れ込んだ結果 (図 1 )、限界質量に達して中心付近で始まる核融合反応の暴走によって爆発するものである。このような白色矮星は太陽と同じくらいか数倍の質量を持った星の進化の末に残る天体である。白色矮星の限界質量は太陽の質量の約 1.4 倍 ( 2.8 × 1030 kg ) ということが理論的に知られている。
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核融合反応によって放出される γ 線で加熱された物質は高温になり、さらに反応が進み星全体に核融合反応の燃焼波が伝わる。反応後にはかなり ( 質量で約 1.2 × 1030 kg ) の物質は放射性元素ニッケル 56 になるが、星の表面付近では密度が低く反応の進みが遅いため、珪素や硫黄、酸素、炭素が存在する。爆発のエネルギーは炭素、酸素が鉄などに変わったときの質量欠損分のエネルギーで供給され、およそ1044J (ジュール)である。爆発の結果、星は平均で秒速 10000 km に近い速さで膨張する。断熱冷却により星は急激に暗くなるので、遠くの銀河での爆発は最初から観測されることはない。ところが、爆発の際に合成された放射性元素ニッケル 56 が半減期 6.1 日で放射性元素コバルト 56 に崩壊し、さらに半減期 77 日で鉄 56 に崩壊するときに放出される γ 線が星を加熱する。加熱されたプラズマ状態のガスから放射される光が星の表面に達して星は明るくなり始め、銀河と同じくらいの明るさに輝き超新星として観測されることになる (図 2 )。さらに時間が経って膨張が進みガスの密度が下がってくると放射性元素から出てくる γ 線は物質を加熱せずに星をすり抜けるようになり、ガスの温度は下がり、超新星は暗く赤くなっていく。明るさのピークは爆発から 20 日前後となる。
図 2 渦状銀河 NGC4526 に現れた超新星 1994D(左下の明るい星 ) ( http://apod.nasa.gov/apod/ap981230.html ) |
図 3 超新星爆発直前の大質量星の元素組成分布の模式図 |
もう 1 つの爆発のしかたは太陽の 10 倍以上の質量を持った星の最後に起こる大爆発である。星の中心部で核融合反応が進み、最後には鉄でできた核が中心に形成される (図 3 )。その核はどんどん大きくなって質量が太陽の 1.3 倍から数倍程度になると自分の重さを支えきれなくなって収縮し始める。中心核は原子核同士が触れ合う位にまで近づいた時点で収縮を止める。その時の中心核の半径は数 10 km で、原始中性子星が誕生する。収縮でガスが得た運動エネルギーはいったん熱運動に転換され原始中性子星内にとどまる。原始中性子星はニュートリノを放射することで冷えていき、エネルギーのほとんどが宇宙空間へ運び出される。エネルギーの総量は 1046J を超える( 図 4 )。このとき、原始中性子星の質量が太陽の約 3 倍以上あると再び収縮を始めブラックホールになる。 KamiokandeII などのニュートリノ望遠鏡が大マゼラン雲に 1987 年 2 月に出現した超新星 SN1987A から検出したニュートリノは大質量星の中心核が重力収縮して中性子星を残した証拠と考えられる。このエネルギーのうちの数 % が星の外層を吹き飛ばすのに使われるという説が有力だが、その具体的な機構は未だわかっていない。
図 4 鉄の中心核が収縮する様子 |
ところで、超新星爆発を起こす瞬間の大質量星の姿はその質量や自転の速さ、環境によって千差万別である。星の初期質量が大きいとその放つ光の圧力によって外層を星風として失う。水素の外層をすべて失った星の爆発は Ib 型と分類され、そのうえ、ヘリウムの外層もすべて失った星の爆発は Ic 型と分類される。外層は星周物質として存在し、爆発で吹き飛んだ物質と衝突したときに電波から X 線に至る電磁波を放射する。水素の外層を保ったまま爆発すると II 型超新星と分類される。このように爆発時の星の姿がさまざまであることから明るさの変化も多様になる ( 図 5 )。星の自転が速いと超新星爆発は球対称からずれていき、見る方向によって超新星の見え方はさらに多様になる。 Ic 型超新星の少なくとも一部は γ 線バースト現象も起こすことが観測によって明らかになってきた。しかし、 γ 線バーストによっては超新星の兆候を見せないものもある。超新星爆発と γ 線バーストの関係の解明はこれから著しく進展すると期待される。
【 茂山俊和 東京大学大学院理学系研究科(2006年11月)】
図 5 いろいろなタイプの超新星の明るさの時間変化。赤と緑の点で示してある超新星は II 型、青は Ia 型、黒が Ic 型で、紫は初期は II 型に分類されていたが、その後 Ib 型とよく似たスペクトルを示すようになったので IIb 型と分類されるようになった。 |