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天文部「散開星団と球状星団」をくわしく解説!

 牡牛座にあるプレアデス星団 M45、和名すばるは、肉眼でも幾つかの星の集まりとしてみることのできる美しい星団で、散開星団のひとつである 図 1 )。散開星団は、年齢の若い星を数 10 から 1000 個程度含んでいて、半径 1 パーセックから 10 パーセックの大きさを持ち、星の金属量 重元素量が高く、主に銀河系の渦状腕に沿って分布している。

 

図 1 散開星団プレアデスすばる )
( http://www.robgendlerastropics.com/ から転載 )

 

 色-等級図縦軸に星の等級、横軸に色、あるいは、スペクトル型を示した図 上に散開星団を構成する星をプロットすると、多くの星は主系列と呼ばれる帯に分布しており、これらの星が生まれてまだ間もないことを示唆している 図 2 )。この色-等級図には、星の進化モデルから期待される年齢一定の線である等時曲線も記されており、この図からプレアデス星団の年齢はおおよそ 1 億 3000 万年と見積もられる。牡牛座には太陽に最も近い散開星団であるヒアデス星団もあり、三角視差を測定することによって距離を求めることができる。位置天文衛星ヒッパルコスによる観測から、距離にしておおよそ 46 パーセックという結果が得られている。正確な三角視差が得られないようなもっと遠くにある散開星団に対しては、その主系列の部分とヒアデス星団のそれと比較して 主系列フィッティング )、その等級差から距離を求め、みかけの等級と組み合わせて、散開星団の絶対等級 天体を 10 パーセックの距離に置いたときの明るさ を求めることができる。

 

図 2 散開星団プレアデス星団、ヒアデス星団、大熊座星団 の色- 等級図  ( Tordiglione, V. et al. 2003, Mem. S.A.It. Vol.74, 520 より転載 )

 

 図 3 に典型的な球状星団でぺガスス座の方向にある M15 の写真を示す。球状星団は、ひとつの星団あたり 10 万から 100 万個の星が数パーセックから数 10 パーセックという狭い領域に多く密集していて、星の空間密度が最も大きい恒星系である。銀河系では約 160 個ほどの球状星団が知られている。球状星団の星の金属量は一般に低い。

 

図 3 球状星団 M15
( http://www.seds.org/messier/m/m015.html より転載 )

 

  球状星団をつくる星を色-等級図上にプロットすると、どれも図 4 のような様子を示す。すなわち、明るくて青い主系列の星は含まず、主系列の帯は「転向点」を境に折れ曲がり、赤色巨星の系列へとつながっている。その他に図 4 でみかけ等級が 16 等で水平に分布する星 水平分枝星も見られ、散開星団の色-等級図と様子が大きく異なり、進化の進んだ星が卓越しているのがわかる。また、転向点や赤色巨星が並ぶ部分があまり広がっておらずシャープな帯を成していることから、球状星団の中の星はある時期に同時に形成され、どの星も年齢と金属量が同じであることがわかる。球状星団は銀河系最古の天体であるので、これらの年齢から銀河系がいつ生まれたのかを知ることができる。

  図 4 には星の進化モデルから期待される等時曲線も記されている。この年齢評価に敏感な量は、転向点の絶対等級であり、この量は星団の金属量やヘリウム量にも依存している。また、この転向点の絶対等級を求めるには、主系列の位置を合わせる方法や水平分枝にある琴座 RR 星型変光星の等級を用いる方法などに基づいて、星団までの距離を正確に決める必要があり、これが年齢決定の主な不定要因となる。図 4 に示された球状星団 M15 では、年齢がおおよそ 120 億年と推定される。

図4 球状星団 M15 の色-等級図。
転向点は主系列から赤色巨星分枝への折れ曲がりで、もっとも青い 高温な点をいう。 ( Salaris, M. et al. 1997, ApJ, 479, 665 より転載)

 

 図 5 に、散開星団と球状星団の光度分布関数の様子を示す。散開星団は明るいものほど少なく暗いものほど多い関数形となっている。散開星団の年齢は若いので、このような頻度分布で星団が形成されたと考えられる。これに対して球状星団では、ある特定の光度のものが最も多く、ガウス関数型の光度分布関数をしているのがわかる。球状星団は年齢が古く、銀河系中心を重心とする細長い楕円軌道の上を 1 億年程度の周期で運動している。この運動の過程で暗いものが解体されたのであると考えられている。

【千葉柾司 東北大学大学院(2008年 5月)】

図 5 散開星団と球状星団の光度関数
( Van den Berg, S. & Lafontaine, A. 1984, AJ, 89, 1822より転載 )

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