天文部「銀河系」をくわしく解説!
天の川として夜空に広がる光の帯は、銀河系にある無数の星々によって形作られている。これらの星々はおもに円盤状に分布しており、我々はそれが天球に投影されてゆるやかにカーブした姿を天の川として見ている。銀河系にある天体位置の方向を記述するには、図 1 にあるように円盤の主面( 銀河面) を基準とする銀河座標 (l , b)を取ると便利である。座標の中心にはいて座付近にある銀河中心を取り、そこから左回りに銀経 l(0°≦ l ≦ 360°)、銀河面から垂直方向に銀緯 b ( -90°≦ b ≦ 90°) を取る。太陽の位置は銀河中心からおおよそ 3 万光年の距離の銀河面上にある。
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天体の座標の取り方には春分点を基準とする赤道座標 (α , δ)もある。これを銀河座標(l , b )に変換するには、銀河座標と赤道座標との関係を与える量、すなわち銀河北極の赤道座標(αG , δG )、銀河中心と赤道座標の北極のなす角 θ を必要とする。これらを図 2 に図示する。
図 2 銀河座標と赤道座標の関係
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前述のように天の川に見られる光の帯は、おもに約 1 千億個の星からなる銀河系の円盤部に対応しており、その直径は約 10 万光年、厚さは円盤の外側ほど薄く太陽付近では 2000 光年ほどである。いて座方向の天の川中心部はとくに明るく輝いていて、星が数多く密集している。この領域は空間的には丸く膨らんだ形をしており、バルジと呼ばれる。また、円盤部を取り巻く球状の空間にも、密度は薄いながら星や球状星団が多く分布しており、このような空間をハローと呼ぶ。これらの円盤部と異なった空間分布を持つ恒星系部分を総称して楕円体部と呼び、円盤部の星に比べて赤い色をしていて古い年齢の星が多い。
銀河系には明るく見える星だけでなく、おもに水素からなる星間ガスがあり、その総質量は約 50 億個の太陽質量に匹敵する。星間ガスの濃い部分には星間塵が多く含まれており、背景の星からの光を遮る。銀河系空間には、宇宙線と呼ばれる高エネルギーの荷電粒子やマイクロガウスの強さの星間磁場などもあり、これらは総称して星間媒質と呼ばれている。星も含めたこのような銀河系物質の性質は、さまざまな波長の電磁波を通して知ることができ、波長が変わると銀河系の様子も違って見える。その様子が図 3 に示されている。
図 3 さまざまな波長で見た銀河系
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上から、電波( 0.4 GHz )、中性水素ガス、電波(2.7 GHz )、水素分子ガス、遠赤外、中間赤外、近赤外、可視光、X線、γ線 (http://mwmw.gsfc.nasa.gov/mmw_sci.html より ) |
ところが、このように電磁波を通して知ることができる世界は、銀河系の物質の氷山の一角であることがわかってきた。銀河系に実際どれだけの質量の物質があるか求めるためには、光で見える部分を足し合わせた方法 (光学質量) のほかに、天体の運動から決める方法 (力学質量) があり、とくに後者の方法から真の質量を求めることができる。たとえば、銀河系の回転曲線から、その遠心力とつり合うべき重力の大きさを知り、この重力をつくり出す物質の質量を求めることができる。ここで、光って見える部分しか物質がないと、太陽から外側では回転曲線が銀河中心からの距離とともに減少するはずであるが、実際はそうなっておらず毎秒約 220 キロメートルの一定の値になっている。このことから、銀河系のハローには我々の目に見えない暗黒物質 (ダークマター)が広がっており、その強力な重力によって目に見える円盤部ならびに楕円体部にある星を束縛していることがわかる。その総質量は光って見える部分の約 10 倍(1 兆個の太陽質量程度)で空間的にも約 10 倍の拡がり(半径 50 万光年程度)を持っていると考えられている。
【千葉柾司 東北大学大学院(2006年11月)】