気象部「気温の月別平年値」をくわしく解説!
大気の温度を気温という。温度の単位 は、SI(国際単位系)では K(ケルビン) であるが、気温の観測では ℃(摂氏)を用い、 0.1 ℃ を最小単位としている。
気温は地表面からの高さによって異なる。温度計 (通風筒を用いる場合は通風口)の設置高度は、世界気象機関 (WMO)では地表面上(積雪の深さが大きい場合は雪面上)1.25 ~ 2.0 m としているが、気象庁では 1.5 m を基準としている。
気温の観測値は観測場所付近の気温を代表しているものでなければならない。代表性を保つためには、つぎのようなことに注意する必要がある。
( 1 ) 設置場所の地面は地域を代表していること(たとえば、砂漠に設置する場合の地面は周りと同じ砂地であること )。気象庁では、芝生を植えた露場またはこれに準じた場所で観測している。
( 2 ) 長時間日陰にならないこと
( 3 ) 感部に日射や地物からの反射 ・ 放射が当たらないこと
( 4 ) 感部周辺の風通しがいいこと。通風筒を有しない測器を使用するときは百葉箱の中に置いて観測する。
最も簡単に測定できる温度計は水銀温度計で、ガラス製の二重管水銀温度計を 2 本使用して湿度も同時に観測できる乾湿計( 乾湿球温度計)が使用されてきた。 1949 年以前の乾湿計は無通風(自然通風)であったが、風の影響を受けるため、 1950 年からはファンを用いて一定速度(2.5 ~ 5 m/s)の通風をして測定するようになった。 1970 年頃から、おもに白金抵抗温度計(電気式温度計 )が使用されるようになったが、現在でも白金抵抗温度計の校正のために、携帯用通風乾湿計が使用されている。白金抵抗温度計の感部も、同様に通風している。
日平均気温は時別値を平均して求めるが、そのときの時別値の数は、要素や時代によって異なっている。通風乾湿計と金属製自記温度計が使われていた 1960 年代までは、観測者による通風乾湿計の読み取り回数は気象官署によって 1 日 3 回(9 、 15 、 21 時 )、 4 回(3 、 9 、 15 、 21 時 )、 8 回(3 、 6 、 ・・・ 21 、 24 時 )、 24 回(毎正時 )とまちまちであった。 8 回未満の官署は金属製自記温度計の記録を補正して 3 時間ごとの気温を求め、その 8 回平均値を日平均値としていた。一方地域気象観測システム (アメダス)では 24 回平均値から日別値を求めるようにした。気象官署はアメダスの観測点も兼ねているため、官署には 2 つの日別値が存在することになった。これを解決するため、 1991 年 1 月から官署の観測においても日平均気温を 24 回の観測値から求めるようにした。
最高・最低気温もよく利用される。日最高気温の月最高値を月最高気温というが、ほかにも日最高気温の月平均値や月平均気温の観測開始以来の順位 (高い方から・低い方から )、最低気温が 0 ℃ 未満の日(冬日)数など、さまざまな統計値がある。近年、温暖化や都市化の影響で気温の上昇が取りざたされている。気温の統計例として、 1901 ~ 2004 年の 104 年間での月平均気温の高い方から 1 ~ 3 位( 異常高温)の出現数と、低い方から 1 ~ 3 位( 異常低温)の出現数の経年変化を図に示す。 20 世紀初頭から観測データの均質性が継続している 17 地点について求めた。
【山内豊太郎(2006年11月)】
図 月平均気温の高い (低い)方から 1 ~ 3 位の出現数
(『 異常気象レポート 2005 』(気象庁 )より )
【 参考文献 】
竹内均監修 :『地球環境調査計測事典 第 1 巻 陸域編 ( 1 ) 』、p.11 ~ 12、フジ ・ テクノシステム(2002 )
気象庁編 :『地上気象観測指針 』、p.33 ~ 36、気象庁(2002 )
気象庁編 :『異常気象レポート 2005 』、p.56 ~ 57、気象庁(2005 )