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気象部「高層気象観測平年値」をくわしく解説!

 気温や湿度の高度分布は、日によりまた所により異なっている。海抜高度が 1000 m 上昇するごとに気温が 6.5 ℃ 下がるというのは平均の話で、ときには高くなるほど気温が上がるという逆転層があることもある。このような上空の状態から大気の安定度や可降水量を知り、雲の発達や降水量を予測することができる。高層気象観測は、大気の熱力学的構造(気温、水蒸気量の鉛直分布)と大気の流れの鉛直分布を知るために実施されている。


 気象庁の高層気象観測の歴史は 80 年を越える。最も古くから行われ、現在まで続いている高層観測の代名詞といえるのが、水素またはヘリウムガスを充填した気球に軽量化された測器を結びつけて飛揚させるラジオゾンデである。気球は空気の希薄な成層圏中部まで上昇し、膨張して破裂するが、およそ 30 km の高度まで観測できる。ラジオゾンデのうち気圧、気温、湿度の観測値を電波で地上に送るとともに周辺の風で流されるラジオゾンデの位置を地上から追跡して高層の風を測るものをレーウィンゾンデ観測といい、日本では 1957 年以来観測が行われている。また、近年ゾンデに GPS 受信機を搭載し、ゾンデの移動に伴う GPS 信号の変化から高層風を求める GPS ゾンデが導入されている。


 比較的簡単な高層観測に、係留気球とパイボール観測がある。前者は、大きな気球に気圧・気温・湿度・風の測器を吊し、アドバルーンのようにロープで地上からつないだまま観測する。後者は、気球だけを放球し測風経緯儀で追跡して一定時間間隔で方位角と高度角を測定し、上昇速度を一定と仮定して高度別の風向風速を求める。そのほか、オゾンなど特別の目的の測器をつるして飛揚する特殊ゾンデもある。



 これまでに述べたものは、すべて測器を上空に運んで観測する直接観測であるが、 2001 年 4 月からは、地上から電波を上空に向けて発射し、リモートセンシングの技術によって高層風を観測するウィンドプロファイラのネットワークが構築され、気象庁で運用されている。そのほかにもドップラーレーダー、ライダー、ソーダー、 GPS 可降水量、マイクロ波放射計や気象衛星を用いた観測など高層大気を遠隔測定する技術の発展はめざましい。
世界の気象機関に属する高層気象観測所では、 1 日に 2 回世界時UTC0 時および 12 時日本標準時 ( JST ) の 9 時、 21 時)の 30 分前にラジオゾンデを飛揚して観測を行っている。



 データ解析方法としては、大気の鉛直構造を正確で効率よく再現できるよう、指定気圧面と特異点のデータを記録として残す。指定気圧面は 1000 hPa から 5 hPa まで 25 面あり、指定気圧面における気温、湿度、風向・風速は、その気圧の上下の気圧観測値を持つ観測点の値から内挿によって求める。高度は、これらの内挿値を用いてジオポテンシャル高度を求める。高層天気図として最も代表的なものは 500 hPa高度約 5600 mであるが、そのほか解析の目的に応じて 850 hPa同 1500 m、 700 hPa同 3000 m、 300 hPa同 9000 m、 200 hPa 同 12000 m面などの天気図が用いられる。地上天気図では気圧分布が海面気圧の等圧線で表されるのに対し、高層天気図では指定気圧面のジオポテンシャル高度が等高線で表される。特異点は、地上、各要素の観測終了点 湿度は気温が初めて -40 ℃ を下まわった点の直前の点を最終点とする )、欠測があった場合その上下端のほか、一定の条件を満たす逆転層の上下端などの気温湿度特異点、風速が最大の点などの風特異点が気温・風の鉛直プロファイルを忠実に再現できるように選択される。

【山内豊太郎(2006年11月)】

【 参考文献 】
竹内均監修 :地球環境調査計測事典第 1 巻 陸域編 ( 1 ) 』、p.43 ~ 45、フジ・テクノシステム 2002 )
気象庁編 :高層気象観測指針 』、気象庁 2002 )

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