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環境部「オゾン全量」をくわしく解説!

 オゾンは地表面 付近にも存在するが、大部分は地上 10 ~ 50 km にあって、この付近をとくにオゾン層と呼んでいる。ある地点の上空の気柱内にある全オゾンを標準状態 0 ℃ 、 1 気圧に圧縮したと仮定したときのオゾンの厚さをオゾン全量 という。この値が 3.5 mm であるとき、 0.35 atm-cmまたは 350 m atm-cm という。 m atm-cmミリアトムセンチメートル をドブソン ・ ユニットDobson Unitと呼ぶこともある。


 すべての大気を標準状態にすると、約 8 km の厚さになるが、そのうちオゾンが占める部分は 3 ~ 5 mm300 ~ 500 m atm-cm程度である。


  オゾンは紫外域と可視域に吸収帯があり、オゾンによる吸収が強い波長と弱い波長で太陽光を測定することにより、大気中のオゾン全量を求めることができる。



 また天頂散乱光を連続的に測定するとき、オゾンによる吸収が強い波長では、太陽高度が低くなるにつれて急激に減少していた散乱光の強さが、ある程度以上高度が低くなるとほとんど変化しなくなる。それに対して吸収の弱い波長では減少し続けるので、両者の比をとると減少から増加に転じる。これを反転効果といい、オゾンの鉛直分布の状態によって変化する。このことから、日出没時頃から一定の太陽高度角の間の天頂散乱光を連続的に測定し 反転観測という )、上空のオゾン量を層別に求めることができる。大気を地上から 500 、 250 、 12 5、 62.5 、 31.2 、 15.6 、 7.8 、3.9 、 1.96 、 0.98 hPa の各高度を境界とする 11 気層に分割して、各層のオゾン量を計算している。



 0.4 μm より短い波長の光を紫外線といい、 UV と略称するが、その紫外線を波長 0.28 および 0.315 μm を境に 3 つの領域に分け、可視域に近い方から UV-A 、 UV-B 、 UV-C 領域という。 UV-A は生物にとくに大きな悪さをしない。 UV-C は非常に有害であるが、そのうち 0.2 μm 未満のものは高度 90 km 以上の大気上層部で酸素原子、酸素分子および窒素分子に吸収され、それより長いものもほんのわずかのオゾンにすべてが吸収されるので、当面問題でない。



 今一番問題になっているのは、 UV-B 領域である。この領域の紫外線は UV-A に比べてエネルギーが強いのでより大きなダメージを生物のタンパク質に与える。人類にも水ぶくれができるようなひどい日焼けや白内障を起こさせるなどの悪影響を及ぼす。最も怖いのは皮膚がんである。緯度が低いほど、そして皮膚のメラニン色素が少ないほど皮膚がんの発症率は高くなっている。その理由は、 UV-B の地上へ到達する量は、太陽高度が高く大気中のオゾン量が少ない低緯度に行くほど多くなるからである。オゾン量が 10 % 減ると、地表に入射する UV-B の量は約 15 % 増えるとされている。

【山内豊太郎(2006年11月)】




図 波長による紫外線の分類とオゾンの透過率
オゾン全量 300 m atm-cm のとき )気象庁提供

【 参考文献 】
竹内均監修 :地球環境調査計測事典 第 1 巻 陸域編 1 』、p.11 ~ 12、フジ・テクノシステム 2002 )
嶋村克 ・ 山内豊太郎 :天気の不思議がわかる本 』、 p.225、廣済堂2002 )

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