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多様な太陽系外惑星たち 2015年版(平成27年版)

 1995 年に太陽系以外の恒星に初めて惑星が発見されるまで,太陽系は人類が知っている唯一の惑星系だった.それからおよそ 20 年,太陽系以外の 惑星(太陽系外惑星)の発見数は,候補を含めて 4000 個を超えようとしている.これらの発見によって,宇宙には太陽系の惑星とは全く異なる多様な惑星たちが存在していることが明らかとなってきた.ここでは宇宙にどのような太陽系外惑星が発見されてきたのかを紹介しよう.

(0)太陽系の惑星たち
 まずは惑星系のひとつの例として,太陽系の姿を振り返ってみよう.太陽系には,内側に水星・金星・地球・火星という 4 つの岩石惑星(地球型惑星)があり,外側に木星・土星という 2 つの巨大ガス惑星(木星型惑星)と,天王星・海王星という 2 つの巨大氷惑星(海王星型惑星)がある.これらの 8 つの惑星たちは,どれもほぼ円に近い軌道を持ち,太陽の赤道面とほぼ揃った公転面を,みな太陽の自転と同じ向きに公転している.

(1)主星に近い灼熱巨大惑星
 1995 年に初めて発見された太陽系外惑星は,太陽型の恒星ペガスス座 51 番星を公転するペガスス座 51 番星bだった.驚くべきことに,この惑星は太陽系の木星とほぼ同じ質量にも関わらず,たった 4.2 日という短周期で主星のまわりを公転していた.同じように主星に近い軌道(公転周期 10 日以下)を公転する巨大惑星はその後続々と発見され,現在では 100 個あまり発見されている.このように主星に近い軌道を持つ灼熱巨大惑星は,その質量に応じてホットジュピターやホットネプチューンと呼ばれている.

(2)楕円軌道の惑星
 太陽系の 8 つの惑星は全てほぼ円に近い軌道(離心率が 0.2 以下)を描いて公転しているが,太陽系外惑星にはゆがんだ楕円の軌道をしている惑星も 100 個以上あることがわかってきた.特に軌道離心率が大きな惑星として知られているのが,2001 年に発見された HD80606b という公転周期約 111 日の惑星で,その軌道離心率は 0.93 もある(図参照).この惑星は主星から最も遠いところでは太陽と地球の距離ほどまで離れるものの,最も近いところでは主星の半径のたった 2 倍程度の場所を通過し,その際に約 700 度も大気の温度が上がることが知られている.この HD80606b の極端な楕円軌道は,HD80607 という伴星の影響によって形成されたと考えられている.

(3)逆行する惑星
 太陽系の 8 つの惑星はどれも太陽の自転と同じ向きに公転しているが,太陽系外惑星には主星の自転とは逆向きに公転する惑星もあることがわかってきた.最初に発見された逆行惑星は HAT-P-7b という公転周期 2.2 日のホットジュピターで,2009 年に日本とアメリカの観測チームがすばる望遠鏡を使った独立な観測から逆行軌道であることを発見した.HAT-P-7b についてはその後のすばる望遠鏡の観測で,外側に別の巨大惑星と伴星があることが発見され,それらの影響で逆行惑星になったと考えられている.このような逆行惑星は,現在では 10 個程度発見されている.

(4)2つの太陽を回る惑星
 映画「スターウォーズ」に登場した主人公ルーク・スカイウォーカーの故郷の惑星タトゥイーンは,2 つの太陽のまわりを回る惑星で,映画では 2 つの夕日が沈んでいくシーンが登場した.このように 2 つの太陽を回る「タトゥイーン型惑星」は長らく発見されず,ずっと SF の存在でしかなかった.しかし,トランジット法による惑星探査を行ったケプラー宇宙望遠鏡によって,2011 年にようやく初めてのタトゥイーン型惑星 Kepler-16(AB)b が発見された.タトゥイーン型惑星はケプラー宇宙望遠鏡の食連星候補のまわりに 8 個発見されており,他に数十個ありそうだと国際会議で報告されている.ただ,これまでに発見されたタトゥイーン型惑星は,タトゥイーン のように生命が居住できそうな惑星ではない.

 以上のように,宇宙には太陽系の惑星とは全く異なる多様な惑星が存在していることがわかってきた.では逆に,太陽系にそっくりな惑星系というのは他にも存在するのだろうか? まだそのような惑星系は発見されていないが,その答えはこれからの観測によって明らかにされていくだろう.

【 成田 憲保 】


図1 楕円軌道への惑星HD80606bの軌道

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