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平成19年【序文】

2007年版の理科年表です.
本年,3年に一度開催された国際天文学連合の総会で,冥王星が惑星ではなくdwarf planet(矮惑星,仮称)と呼ばれる新たな族に位置づけられました(惑星の新たな定義については暦部のトピックス参照).新たな定義が,二転三転したことや,惑星が天文学の対象であるにしても,身近な存在であったため,大センセーションを巻き起こしました.日本や世界のマスコミは,「冥王星が惑星から格落ち」等と伝え,まるで,冥王星が無くなるような騒ぎでした.

冷静に考えると,今回の事態は,天文学とくに惑星科学に新たなページが開かれたと認識すべきです.冥王星が発見された当時には,この新しい族の天体は一つだけで,その後,70 年以上も待たないと同じ仲間を見つけられなかったのです.観測装置の発展から,冥王星を代表とする族の存在が明らかになり,惑星科学が新たに進展しました.科学の発展の中でこのような事例は多々あります.
理科年表では,今回の惑星の新たな定義を受けて,暦部,天文部で適切な対応をしました.dwarf planetの和名など,まだ未決定な部分もありますが,新たな族の項目も追加しましたのでご覧ください.
ここ数年,惑星科学は我々の太陽系だけでなく大きな発展を続けています.太陽系外の恒星の周りにも惑星の存在が確認され,既にその総数は200 個を超えています.今回の惑星の定義は,我々の太陽系の惑星に限った定義でした.今後は,さまざまな観点から検討を加え,太陽系外の惑星の定義もつくられることでしょう.そうしないと,誰が太陽系外の惑星の直接の撮像(未だありませんが)をした人か決まりません.いずれにせよ,科学の進歩がもたらす新たな知的世界は着実に広がっています.

理科年表は,天文を含めてさまざまな分野の新たな事実を反映して2007年版をつくりました.最近の市町村合併による人口10 万人以上の都市の増加,ヒト遺伝子地図の改訂,気象庁観測の環境データの改訂など最新のデータを適切な形で皆様にお伝えします.どうぞご利用ください.

  2006年 10 月

国立天文台 台長 観山 正見 

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