平成21年【序文】
2009年版の理科年表です。
理科年表には、科学で使う様々な定数、観測量が掲載されています。それらは、測定の精度の向上や新たな事実の発見などによって、変更されていきます。したがって、理科年表は、毎年改訂して、最新の情報をお届けしています。ところが、中には、定義定数と言って、その数値が確定した定数もあります。「天文部」の最初にある光速度ですが、これは確定値です。光速度は、いかなる系でも不変であるため、速度の基準となったわけです。しかし、このような例は珍しく、今年度版にも新たな改訂が随所にされています。
「環境部」では、地球温暖化で話題となっている大気物質の観測情報を掲載しています。 「気象部」では、最近の異常気象に伴って、観測史上最高気温記録が更新されました。2007年8月16日に熊谷と多治見で観測された 40.9 ℃がそれです。今後も「ゲリラ豪雨」など様々な異常気象が心配されます。異常気象の原因は、様々に議論されていますが、「環境部」や「気象部」のデータの総合化の中から、何らかの発見があるかも知れません。
「生物部」では、京都大学山中伸弥先生の iPS細胞について解説トピックスを設けました。今後の発展が期待されるテーマです。「物理/化学部」では、高分子化合物のデータ見直しを行いました。 「暦部・天文部」での話題は、2009年に日本で見られる皆既日食が挙げられます。特に、暦部に詳しい情報を掲載しました。また、2009年は、ガリレオが1609年に望遠鏡で天体観測を開始して400年にあたります。それを記念して国際連合やユネスコは、2009年を「世界天文年」と設定しました。そこで関連のトピックス記事を掲載しました。また、月周回衛星「かぐや」による新たな月の知見も示されています。
今世紀となって、新たな発見や新事実の検証が続いています。理科年表はその最新の情報を今後毎年お届けしていきます。
2008年 10 月
国立天文台 台長 観山 正見