理科年表オフィシャルサイト

もっと身近にサイエンスを      国立天文台 編

MENU

太陽系外の惑星の発見

 太陽によく似た近傍の星に,惑星の存在を確認したとの報告が最近続いている.その最初の報告者の中心は,ジュネーブ観測所のマイヤーとクエロッツである.
 惑星系を,他の星の周りに発見することは,惑星形成論の上で重要であるので以前より多くの試みがなされてきた.直接観測する事は,中心星が明るすぎて(太陽系の場合,可視光では太陽は木星より10億倍明るく,地球より100億倍明るい),極めて難しい.そこで,間接的に惑星の存在を観測する方法が試みられてきた.即ち,惑星が中心星を周回すると,中心星も系の重心の周りを回転する.そこで見えている中心星の動き(速度や位置の変化)を観測することによって,惑星の存在や,その質量及び軌道の離心率を求められるのである.
 木星の回転によって太陽の場合も,視線速度は12m/sの振幅で振動している(周期は公転周期の12年).星の視線速度は,星の光を分光して,そのスペクトルに現れる吸収線の位置の変動を観測して求める.現在,速度を分解する能力の限界は,数千本の吸収線を同時に解析することで,秒速3mから10mといわれている.つまり,我々と同じ観測装置を持つ生物が近傍の星にいれば,太陽の動きをみて木星の存在に気がつくことができるのである.
 マイヤーたちは,近傍の星の速度変化を精密に計測するプロジェクトを推進してきた.そのなかで,ペガスス座51(51 Peg)の視線速度は,振幅約60m/s,4.23日(!)の周期で正確に振動していることを発見した(1995年).振動の周期は,公転周期であるから,その天体の軌道半径が計算できて,0.05天文単位とわかった.速度の振幅は,この天体の質量(M)に比例するが,軌道面が天球上でいかに傾いているか(軌道傾斜角 i)不明であるので,結局はM sin iの値がわかる.つまり質量の下限が与えられる.51 Pegの場合,質量の下限は0.47木星質量と判明した.太陽系の形成論では,木星のような巨大惑星は,太陽系でも外側に作られるとしてきたので,その発見の意味は大きい.その後,いくつかのグループによって,同様な観測から他の太陽近傍の星にも,様々な位置に巨大惑星が存在することが明らかとなった.sin iの統計的平均値から,実際の質量は平均的に下限の2倍程度であろう.
 これらの天体が,実際惑星なのか,それとも小さな星なのか,離心率の意味するものはなになのか,現在議論が伯仲している.惑星の形成論を論じる研究者たちは,惑星が形成された後の軌道の変化の可能性を考察し始めた.例えば,巨大惑星は中心星より十分に遠方の距離で形成されたが,その後,様々な相互作用で,軌道半径が短くなったとする考えである.今後は,大型望遠鏡も使用して,もっと直接的な惑星の存在の証拠が明らかになると期待される.太陽系外の惑星探査のレースの火ぶたは切られたのである.

主星 質量・sin i
(木星質量)
軌道長半径
(AU)
周期 離心率
ペガスス座51 0.47 0.05 4.2293日 0
おおぐま座47 2.8 2.11 2.98年 0.03
うしかい座τ 3.87 0.0462 3.31日 0.018
HD114762 10 0.3 84日 0.25
表:惑星候補天体の主なもの

【 觀山正見 】

タグ

閉じる