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星には寿命があるのでしょうか?

 星の誕生は、水素に富むガスが自己重力によって球状になり、それが収縮を続け、中心温度が十分高くなって核融合反応を起こして、エネルギーを放出しはじめたときであるといえます。これはすべての星に共通しています。この核融合反応によって水素がヘリウムに変換され、中心ではヘリウムのコアが成長していきます。このような状態の星を「主系列星」といい、星はその一生のおよそ 90 % 、つまりほとんどの時間を主系列星として過ごします。主系列星として存在する時間は星の質量に強く依存し、大体星の質量の 2 乗から 3 乗に反比例しています。たとえば、太陽の寿命は大体 100 億年ですが、太陽の 10 倍の星になるとその寿命は 1/100 から 1/1000 の 1 億年から 1000 万年と非常に短くなってしまいます。

 寿命を迎えた星の終末は、星の誕生時の質量に応じて異なります。低質量( 太陽質量の 0.7 ~ 10 倍の初期質量の星は中心で水素を使い果たして主系列を離れた後は、赤色巨星 ヘリウムコアの周囲で水素が燃えている状態 )、水平分枝星 ヘリウムコアが燃えて核融合反応を起こして炭素と酸素からなるコアを形成している状態 )、漸近巨星分枝星炭素・酸素コアの周囲でヘリウム殻・水素殻が燃焼している状態 を経て、最後に外層を吹き飛ばして炭素 ・ 酸素コアが残ります。このとき、中心の非常に高温の炭素 ・ 酸素コアに照らされたガスが惑星状星雲として観測されます。炭素 ・ 酸素コアは次第に冷え、白色矮星になります。

 大質量太陽の 10 倍以上の初期質量 の星は、さらに核融合反応が進みます。たとえば、太陽質量の 25 倍の初期質量を持つ星は進化が進むと、中心に鉄をコアを持ち、外側に向かって、シリコン、酸素、ネオン、炭素、ヘリウム、水素の層が形成され、たまねぎのような構造を示します。鉄はもっとも安定な原子核であるため、星の内部の反応としてはこれ以上核融合反応を進行させることはできません。しかしながら、鉄のコアの中心温度がおよそ 100 億度を超えると鉄の原子核が光分解され、これによってコアを支えていた圧力が急激に減少します。そのため、コアが急激に落下し、爆発現象が起きます。これが超新星爆発です。超新星爆発はわずかひとつの星の爆発ですが、銀河全体に匹敵するほどの明るさになります。超新星爆発のあと残るのは、初期質量が太陽質量の約 40 倍より軽い星の場合には中性子星、それより重い場合にはブラックホールです。また、吹き飛ばされたガスは超新星残骸として観測されます。

【小野寺仁人 延世大学、韓国(2006年11月)】

 

図 1 低質量星の終末である白色矮星に向かう段階で見られる惑星状星雲 NGC 6543NASA 提供。この惑星状星雲はキャッツアイ星雲として有名です。画像はハッブル宇宙望遠鏡によって撮影されたものです。
http://hubblesite.org/newscenter/newsdesk/archive/releases/
2004/27/
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図 2 超新星残骸のかに星雲 NASA提供。超新星の際に吹き飛ばされたガスで、この中心には中性子星があることがわかっています。この中性子星はパルサーとして観測され、周期 0.033 秒のパルスを発しています。超新星爆発は西暦 1054 年に発生したもので、藤原定家の「明月記」にこのときの記録が記載されています。
http://hubblesite.org/newscenter/newsdesk/archive/releases/
2005/37/
より取得 )
 

図 3 ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された渦巻銀河 M51 で観測された超新星爆発 (NASA 提供 )。左の図の水色の四角部分を拡大したものが右側の 2 つの図です。それぞれ上下段が超新星爆発の前後になっています。
http://hubblesite.org/newscenter/newsdesk/archive/releases/
2005/21/
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