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地球以外の惑星には人間は住めるのでしょうか?

 他の惑星への移住を考える際に重要な概念として「ハビタブルゾーン」があります。ハビタブルゾーンとは惑星系の中で生命が生存するのに適している領域のことで、水が液体で存在できる程度にほどよく遠く、二酸化炭素が凍ってドライアイスになってしまうほどには遠くない領域です。

 現在の太陽系の場合はだいたい 0.97 天文単位から 1.4 天文単位の距離がハビタブルゾーンになりますが 1天文単位= 1 億 5000 万 km )、この範囲に入っている惑星は地球だけです。水が液体であることが必須なのはいうまでもありませんが、ほどよい量の二酸化炭素は温室効果によって惑星の温度を保つので、気体として存在する必要があります。太陽系の惑星である火星や金星はハビタブルゾーンにはありませんので、そのまま移住することはできません。そこでテラフォーミング 地球化によって、惑星を地球のような環境につくり変えてしまうことや、惑星の表面をドームで覆い、そこを擬似的に地球環境にして生活することなどが考えられていますが、これらを実現するには少なくとも数百年から数千年の時間がかかると考えられており、非常に困難です。

  1995 年にペガサス座 51 番星で太陽系外惑星が初めて発見されて以来、 200 個近くの太陽系外惑星が発見されています。現在のところ地球と似たような惑星は発見されていませんが、観測技術の発展に伴って将来的には発見されるかもしれませんので、つぎに、別の星のまわりにある惑星への移住を考えてみましょう。ここでもハビタブルゾーンの概念は重要になってきますが、惑星系のハビタブルゾーンに加えて、今度は「銀河のハビタブルゾーン」ということも考えなければいけません。銀河のハビタブルゾーンとは、我々の銀河系の中で、地球型惑星が存在し、かつ生命の生存に適した環境にある領域です。太陽系は銀河系の中心からおよそ 2 万 5000 光年の距離で円盤部分にありますが、あまりに中心に近くても、また遠くても、さらには円盤から離れすぎても、円盤にある腕の中にあっても、生命を長期間にわたって維持するには適していません。また、太陽に比べて重すぎる星や軽すぎる星も生命の生存には適しません。

 幸いにして太陽の近くには太陽と同じような星はたくさんありますから、これらを次々と観測していけば、いつか移住に適した地球型の惑星が発見されるかもしれません。

 しかしながら、移住を実現するための技術的な問題は山積しています。たとえば移動にかかる時間だけでも、現在の技術では、太陽からわずか 4.4 光年ともっとも近い恒星で、しかも太陽と同じような星であるケンタウルス座アルファ星に行くまでに数万年という時間がかかってしまいます。その移動の間の生命の維持もまた大きな問題です。

【小野寺仁人 延世大学、韓国(2006年11月)】

 

図 1 太陽系のハビタブルゾーン NASA 提供 )。画像には描かれていませんが、外側左のほうに太陽があります。水色の帯がハビタブルゾーンを示しています。
http://eis.jpl.nasa.gov/planetquest/science/finding_life.cfm より取得 )

 

図 2 銀河系のハビタブルゾーン ( Science 提供 )。数値シミュレーションによって計算された銀河系のハビタブルゾーンの進化の様子を示しています。下段の図はまだ銀河が若く、生命の生存に適した領域(緑の部分)がみられません。中段、上段と時間が経過するに連れて緑の部分がみえてきます。( http://astronomy.swin.edu.au/GHZ/ より取得 )

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