雲の種類とその特徴を教えてください。
国際的には 19 世紀の始めにまず巻雲 (絹雲 : Cirrus )、積雲(Cumulus )、層雲 (Stratus)の 3 種類を雲形の基本とすることが提唱され、まもなく乱雲 (雨雲 : Nimbus)が加えられました。1895 年に国際気象会議で雲の分類を世界的に統一することが決められ、10 種類の雲形に分けることなど分類の基本が作られました。現在は、世界気象機関が発刊している国際雲級図 (International Cloud Atlas)に基づいて世界中で観測が行われています。この項に掲載している雲写真は、国際雲級図に基づいて気象庁が観測者用に作成した 『雲の観測』から引用しています。
まずすべての雲を、そのおよその雲底高度により上層雲、中層雲、下層雲の 3 つに分類します。さらに上層雲を巻雲 (Cirrus )、巻積雲(Cirrocumulus )、巻層雲(Cirrostratus) の 3 種類に、中層雲を高積雲 ( Altocumulus )、高層雲 ( Altostratus )、乱層雲 ( Nimbostratus) の 3 種類に、下層雲を層積雲 (Stratocumulus )、層雲( Stratus )、積雲 ( Cumulus )、積乱雲 ( Cumulonimbus) の 4 種類に分類します。
同じ種類の雲であっても、時により半透明 (白色)であったり、不透明(灰色)であったりします。また高積雲と層積雲は、層状、レンズ状、塔状、波状、放射状、蜂の巣状などの共通の特徴を持った形状をしており、雲の高さや雲塊の見かけの大きさなどから総合的に判断する必要があります。
【山内豊太郎(2008年 3月)】
【参考文献 】
気象庁 :『雲の観測 』( 1989 )
嶋村克・山内豊太郎 :『天気の不思議がわかる本 』、p.35、廣済堂( 2002 )
( 1)上層雲 |
巻雲( Ci)は、一般にすじ雲と呼ばれ、その名のとおり繊維状です。白色、半透明で、まっすぐなすじ状のものやコンマを横に寝かせたような形をしたものが多いのですが、時には灰色がかっていて太陽を隠してしまうくらい濃い巻雲もあります。通常一番高いところに現れる雲です。
巻積雲( Cc)は、うろこ雲といわれるように、白い小さな粒状の雲塊が蜂の巣状に規則的に並んでいる雲です。1 つの雲塊の大きさは視直径 1 度(腕を伸ばして小指を立てたときの指先の幅程度 )以下ですが、地平線近くの雲は遠くにあるので、仰角 30 度以上の雲を利用する必要があります。隣あう雲塊がくっついて、さざなみのように見えることもあります。秋の雲の代表とされていますが、秋以外にも現れます。
巻積雲
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巻層雲( Cs)は、薄いベール状の雲で、太陽や月にかさ( ハロー)ができるのがこの雲の特徴です。低気圧や前線が近づいてくるときに、まず巻層雲が広がりそれが次第に厚くなって雨になることが多いので、かさは雨の前触れといわれます。
巻層雲
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高積雲( Ac)には、いろいろなタイプがありますが、最も典型的なものは、ひつじ雲と呼ばれる蜂の巣状に規則正しく並んだもので、仰角 30 度以上で視直径 1 ~ 5 度(腕を伸ばしたときの小指の幅 ~ 指を揃えて立てたときの指 4 本の幅)の大きさに見えます。このタイプの変形として、波状のものやロール状のものがあり、そのほかレンズ状の高積雲、塔状の高積雲などがあります。
蜂の巣状高積雲(左) とレンズ状高積雲(右 )
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高層雲 (As)は、おぼろ雲とも呼ばれ、あまり厚くないうちは雲を通して太陽や月の位置がわかります。その見え方はちょうどすりガラスを通したようで、太陽や月の輪郭ははっきりしません。もっと厚い高層雲では、太陽の位置もわかりません。低気圧が近づくと、まず巻層雲が現われ、それが次第に厚く低くなって高層雲となり、さらに乱層雲へと変わっていくことがよくあります。したがって、そのようなときにはどこからどこまでが高層雲なのかを判別するのは難しく、観測者によって多少の個人差が出るのは止むを得ないことです。太陽や月のかさが現われたり、かざした手の影が地面にできたりすれば巻層雲です。
高層雲
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乱層雲 (Ns)は、いわゆる雨雲で、厚い大きな雲です。そのため暗い灰色に見えます。雨や雪を降らせることが多いのですが、逆に雨を降らせる雲がいつも乱層雲とは限りません。厚い高層雲や層積雲から弱い降水があることもあります。また夕立などしゅう雨性 (一般に粒が大きく降り方の強弱の変化が激しい) 降水を降らせるのは積乱雲や積雲です。また悪天の際、かなりの低空を黒いちぎれ雲が飛んでいるのがよく見られます。これは断片雲と呼ばれる雲で、雲形としては層雲 (縁がほつれている場合)または積雲(輪郭が比較的はっきりしている場合 )に所属します。夜など空がよく見えない場合、連続性 (しゅう雨性でないことで一様性ともいう)の降水があれば乱層雲と判断します。
乱層雲
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層積雲( Sc)は、その名からもまたくもり雲という俗称からもわかるように、あまりとらえどころのない雲です。「層積雲とはほかのどの雲にも当てはまらない雲のことである」というジョークもあります。むろん典型的な層積雲もあります。たとえば、その 1 つは大きなロール状の雲塊が並んでいるもので、塊同士はくっついていることもあり離れていることもあります。このような雲は畑のうねに似ていることからうね雲とも呼ばれます。ロールが短く分かれてモザイク状になっていることもあります。このように比較的規則正しく並んだときの雲塊の大きさは、高度角 30 度以上のときで幅 5 度以上です。そのほか積雲の上部が次第に層積雲に変化したり、レンズ状あるいは塔状の層積雲が現れたりすることもあります。
層積雲
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層雲 (St)は、霧雲といわれるように、最も低いところに現れ、地面に接してできたときは霧と呼ばれます。雲が山や高い塔・ビル等にかかっているときは分かりやすいのですが、そうでないとき、とくに見通しの悪いときには一様で灰色の雲底が見えるだけなので判別が難しくなります。
1.霧雨は層雲から降る
2.層雲を通して見た太陽は輪郭がはっきりわかり、かさができない・・・
などを参考に判別します。このような一様な霧状の層雲のほかに、前述の悪天のちぎれ雲として現れる層雲があります。
層雲
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積雲( Cu)は、わた雲と呼ばれ「ポッカリ浮かんだ」「お饅頭みたいな」などと表現されるおなじみの雲です。この雲の特徴は、
1.輪郭がはっきりしている
2.底が水平であるのに対し上部はこぶのようにまたはカリフラワーのように盛り上がっている
3.太陽光が当たっている部分は明るく輝いているが底の部分は暗い・・・
などです。積雲は対流によって生じます。晴れた日に日射によって地面が熱せられ、対流が起こってできる積雲を好天積雲といい、真夏以外では普通あまり発達しません。しかし上空に寒気が入ったり地面付近が真夏の強烈な太陽に照らされたりして大気が不安定になったときには、できた積雲はむくむくと発達していきます。お饅頭型の偏平な積雲から、こぶがいくつかできた並程度に発達した積雲になり、さらにカリフラワー状の雄大積雲、いわゆる入道雲になります。このような発達は寒冷前線や台風など空気が急激に持ち上げられるときにも起こります。
扁平積雲
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積乱雲 (Cb)すなわち雷雲は、前述の積雲の発達に引き続いて起こります。雄大積雲がさらに発達して雲頂高度が 10 km 近くになると、積乱雲に出世します。圏界面に近づくので発達が押さえられ、雲頂が平たくなり始めますが、まだ入道頭を保っていてほつれてはいません。このような形状を無毛状の積乱雲といいます。雄大積雲も無毛状の積乱雲もともに入道雲で、どちらにとるか判断に迷うことがあります。次第に発達して変わっていくのだから判断しにくいのは当然です。雲が頭上にあって雲頂が見えないときなどは、なおさらです。このようなときには、
1.雷鳴や電光があれば無条件に積乱雲
2.雲底が昼でも相当暗ければ積乱雲・・・
などを参考にして決めます。雄大積雲からもかなり激しいしゅう雨が降ることがあるので、降水の有無からだけで判別はできませんが、ひょうが降れば積乱雲です。雲の頭が天井 (圏界面) にぶつかって平らにつぶれてくると、同時に雲の上部がほつれて繊維状になり、輪郭がぼやけてきます。このような雲を多毛状の積乱雲といいます。この雲の典型的な形状は、最上部が大きく広がったいわゆるかなとこ雲です。かなとこというのは今ではほとんど見られなくなりましたが、かつて鍛冶屋が鉄を打つのに使った台で、雲の上面がスパッと平らになっている様をよく表わした呼び名です。積乱雲はきわめて活発な雲なので、種々の激しい現象を発生させます。雷をはじめ突風、強いしゅう雨性降水 (ひょうを含む)などはよく現れますが、比較的頻度が少ない現象にダウンバーストや竜巻があります。どちらも時間空間的スケールは小さいが、瞬間風速・破壊力は台風にも勝る恐ろしい現象です。積乱雲の雲底に瘤がぶら下がったような乳房雲や紐がぶら下がったようなロート雲が現れたときは、竜巻が発生しやすいので注意を要します。
無毛状積乱雲 (左)と多毛状積乱雲(右 )
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