理科年表オフィシャルサイト

もっと身近にサイエンスを      国立天文台 編

MENU

金属ってなに?

 次のような性質をもつものを金属と総称します。
1電気と熱の著しい伝導性がある。
2磨くと光沢がある。
3延展性に富む。
4 )硬い
など。
単体が金属である元素を金属元素あるいは金属といい、1 族のアルカリ金属元素、2 族のアルカリ土類金属元素、3 ~ 12 族の遷移金属元素、13 族のアルミニウム、ガリウム、インジウム、チタン、14 族の鉛など、元素の周期表のほとんどが金属元素です。金属は硬いといっても例外はあり、アルカリ金属およびアルカリ土類金属は柔らかく、ナイフなどで簡単に切ることができます。金属元素の多くは密度が高く、強度が大きく、機械加工しやすく、水銀、セシウム、ガリウムのように融点の低い元素もありますが、融点、沸点ともに高いです。

 金属のこのような性質は金属結合と呼ばれる結合によります。金属結晶の中で、金属原子は陽イオンとなって規則正しく並んでおり、陽イオンの間を電子が自由に動き回って、陽イオン同士を結び付けています。このような電子を自由電子といいます。電子の海の中に、金属陽イオンが規則正しく並んでいるといえます。いいかえれば電子は非局在化しています。ベンゼンのような芳香族分子でも電子は非局在化していますが、結合に方向性があります。金属の場合結合に方向性がありません。そのため、外力により、原子の位置が容易にずれます延展性 )。金属結合は原子の数だけ分子軌道があり、軌道間のエネルギーの差は非常に小さく、エネルギー順位が連続的に重なったバンド構造になっています( )。電子はバンドエネルギーの下から入っていきますが、最高被占軌道と最低空軌道との差がほとんどありません。そのため金属の両端に電位差をかけると、電子は加速され、エネルギーを得て、電子の入っていない最低空軌道のバンドに容易に上り、正極に向かって移動します。これが電気伝導性の高い原因です。同様なことが熱によっても起こり、熱伝導性も高くなります。

  可視光がよく磨いた金属に当たると、反射され光沢が生じます。これも金属結合に由来する性質です。自由電子は自由に動くとはいっても電子同士はマイナスに帯電しているので近づきすぎると反発します。そのため、自由電子は、他の自由電子に近づくたびに反発力を受けることによって、独特の振動を行います。この振動をプラズマ振動といいます。金属ではこのプラズマ周波数は紫外線の領域にあり可視光より高い周波数を持ちます。そのため可視光が金属にあたっても、自由電子が可視光の振動数より大きく、いいかえれば非常に速く動いているため、可視光は自由電子に跳ね飛ばされて、金属内部に入っていきません。いいかえれば反射が起こり、金属光沢が生じます。このときの反射率が高いほど、金属は白っぽく見えますが、一部の波長は金属表面で吸収されるため、特有の金属光沢とともに、さまざまな金属色が生まれます。

【梅澤香代子 日本大学文理学部(2008年 7月)】


( 付録 )ノーベル賞受賞者の白川英樹博士が導電性高分子の研究を始めたのは博士の合成したポリアセチレン膜が金属光沢をもつことから、電気伝導性を持っているのではないかと考えたのがきっかけだそうです。
http://www1.e-science.co.jp/shirakawa/

 

図 金属原子が一次元に並んで、順に結合していくときのエネルギー準位の変化
1原子が 1 つあるときのエネルギー
22 個の原子が結合した時のエネルギー準位
33 個の原子が結合した時のエネルギー準位
44 個の原子が結合した時のエネルギー準位
5∞個の金属原子が結合した時のエネルギー準位は、エネルギーの幅は有限で、その間に無数の分子軌道に由来するエネルギー準位がある。そのため、一見連続に見えてバンドのように見える。

タグ

閉じる