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オーロラのしくみを教えてください。

 極地方の夜空を彩るオーロラを一言でいえば、超高層大気の原子や分子が宇宙空間から高速で入射する電子や陽子との衝突によりエネルギーを与えられ、余分なエネルギーを光として放出したものです。オーロラの色や形は、入射する高速な粒子のエネルギーや入射パターン、大気組成などによって決まるため、オーロラの動きや形状は、入射する高速粒子のダイナミクスを反映しているといえます。

 高度によって超高層大気の原子や分子の組成と密度が異なることから、オーロラは緑、赤、青などさまざまな色を放ちます。オーロラの上部に見える赤色のオーロラと裾の部分に見える緑色のオーロラはともに大気中の酸素原子が放つ色で、裾の下部に時折見られるピンク色のオーロラは、窒素分子が放つ青色と赤色が混ざったものです。酸素原子の場合はエネルギーが与えられてから光を放出するまでの時間が比較的長く、その間に他の大気中の粒子と衝突しては、光を放つことができません。放出までの時間が 110 秒である赤い色のオーロラが大気の密度が低い上層で見えやすいのはこのためです。

図 1 典型的なオーロラの高さ分布


 極を中心とする磁気緯度 65 度 ~ 70 度の領域はオーロラ帯と呼ばれ、宇宙空間から電子や陽子が入射しやすくなっています。オーロラ帯の磁気緯度は地磁気活動度によって変わり、磁気嵐が始まると低緯度に大きく広がる傾向があります。オーロラ帯では昼夜の別なく常にオーロラが現れていますが、オーロラの光は微弱なので太陽が地平線から十分沈んだ夜でなければ、地上からオーロラを見ることができません。

図 2 NASAの Polar 衛星が撮影した北極域と南極域に現れるオーロラ帯


 オーロラ帯より高い緯度では、オーロラ帯で見られるオーロラほど華やかではないものの、高緯度地方に特有のオーロラを見ることができます。たとえば、北極域のスバールバル諸島や南極点はオーロラ帯より磁気緯度が高いために太陽風の影響を直接的に受けやすく、磁気的な真昼付近では酸素原子が発する赤色が卓越したオーロラを観測することができます。

 オーロラは、輝度が低くてぼんやりとしたオーロラ 拡散オーロラと、輝度が高くて明確な空間構造があるオーロラ 離散オーロラに大別できます。人を楽しませてくれるのは離散オーロラであり、形状によって、アーク、スパイラル、カール、フォルド、バルジ、オメガバンドなどに分類できます。オーロラ嵐が発生すると明るい光が突然激しく動き出し、さまざまな形状の離散オーロラを見ることができます。

 オーロラが激しく全天を舞うオーロラ嵐は一晩のうちに通常 1 回 ~ 数回発生しますが、全く発生しない日もあります。オーロラ嵐の発生の原因については諸説があり、激しい議論が交わされているものの決着がついていません。一般的には、太陽表面でフレアが発生した数日後や、高速の太陽風が地球磁気圏に到達したとき、オーロラ嵐が発生しやすい条件が整うと考えられています。

 オーロラ嵐の初期段階である “ 発達相 ” は 1 時間程度続き、東西に長く伸びる数本のアーク状のオーロラが高緯度から低緯度へゆっくりと移動していきます。そのうち 1 本のアークの一部が突然明るく光りだし、 “ 拡大相 ” が始まります。このときオーロラの動きが最も激しく、華やかなオーロラを見ることができます。 “ 拡大相 ” が数十分間続いた後、 “ 回復相 ” に移行します。 “ 回復相 ” では、オメガバンド、周期 1 秒 ~ 30 秒で明滅を繰り返す脈動オーロラ、ブラックオーロラなどが見られます。ブラックオーロラは拡散オーロラの一部が欠けたもので、通常のオーロラを白黒反転させたように見えることから、このように名づけられました。

【海老原祐輔 名古屋大学高等研究院(2007年 8月)】

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