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オゾンホールは小さくなっているの?

 オゾン層保護に関するウィーン条約やモントリオール議定書などが決められ、現在では世界的にフロンの製造および使用には厳しい規制が行われている。また、冷蔵庫、エアコンなどにすでに使用されているフロンなどについてもその回収や処理の取組みが進められている。その結果対流圏に含まれるフロンの濃度は 1994 年に頭打ちになった。しかし、フロンが空気中に放出されてからオゾンを破壊するまでに長い期間がかかるため、放出を止めてもしばらくはオゾンが減り続け、オゾンホールは拡大している。世界気象機関 WMO )/国連環境計画UNEPが 2006 年 8 月に発表した報告書によれば、フロンと代替フロンのハイドロクロロフルオロカーボン HCFCの排出が今後も続くと見られることから、オゾン層の回復はこれまで予測より 5 ~ 10 年遅くなるとされている。その結果、成層圏のオゾン層破壊物質が 1980 年以前の濃度に回復するのは中緯度では 2049 年、南極地域では 2065 年頃になると予測されている。一方、仮にフロン、 HCFC 、ハロン、臭化メチルなどオゾン層破壊作用のある物質の放出が今年末で全面的に止まれば、オゾン層回復は 15 年早まると予測している。


  図は、 9 ~ 12 月に昭和基地で観測された月平均オゾン全量の経年変化を示す。各月とも年による変動があるが、 1980 年頃からオゾン全量が減少していることがわかる。とくに 1990 年代半ば以降、 10 月の月平均オゾン量は 1970 年代と比較するとおよそ半分に減少している。この図および理科年表の「オゾンホールの面」の図から、オゾンの減少はほぼ止まったように見えるが、まだ回復に向かっているとはいい難く、オゾンホールが小さくなっているとはいえない。

【山内豊太郎(2006年11月)】



図 南極昭和基地の月平均オゾン全量の経年変化
『 異常気象レポート 2005( 気象庁 )より )

【 参考文献 】
気象庁編 :異常気象レポート 2005 』、気象庁2005 )

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