このまま温暖化が進んだ場合、陸地はどこまで後退するの?
地球温暖化が進むことよって、海水面が上昇して、ツバルやモルジブなどの島国やバングラデシュなど沿岸低地が浸水して、人が住めなくなると予測されている。 20 世紀の 100 年間に地球規模では、海面が 10 ~ 20 cm 上昇したことが観測されている。日本周辺海域では、この 30 年間の観測結果から、 1 年間に 2 mm 程度上昇しているが、日本海側と太平洋側では、上昇の程度が異なっている。このまま温暖化が進むと 1990 年にくらべて 2100 年には地球の平均気温が 1.4 ~ 5.8 ℃ 上昇すると予測されており、海水面が 9 ~ 88 cm 上昇すると予測されている。
温暖化により海面が上昇するが、ほかの原因もある。たとえば、大規模な地殻変動や公害のひとつである地盤沈下である。温暖化による海面上昇は、気温が上昇し、海洋の水温も上昇することによる海水の膨脹と、山岳氷河や南極やグリーンランドの氷 (氷床)の氷が融けて海に流れ込むことにより、海水の体積が増加することによって、海水面が上昇する。ちなみに、北極の海氷や南極の海に突き出している棚氷や氷山は、融けても海水が増えないので、海面上昇には影響しない。
1 m 海面が上昇すると陸地はどこまで後退するか、たとえば、東京湾周辺では、現在でも海面 (満潮位)以下の 0 m 地帯があり、強固な堤防で守られているが、 1 m 海面が上昇すると仮定した場合、図 1 に示したように 0 m 地帯が広がると予想されている。
また、 1 m 海面が上昇すると日本の砂浜は約 90 % がなくなると予測されている。砂浜は自然状態では、海面が上昇しても陸地方向に移動するが、堤防で守られていることから、堤防を越えては砂浜が移動できず、結局、砂浜が浸水してしまうことになる。砂浜は夏場の海水浴などリクリエーションとしても重要だが、さらに海水の浄化や豊かな沿岸生態系を形成するなど重要な役割を果たしている。このまま温暖化が進んで、 1 m 海面が上昇したら、日本の海岸の景色は一変し、また夏のレジャーなども様変わりすると予想される。
【原沢英夫 独立行政法人国立環境研究所 (2006年11月)】
【 参考文献 】
環境庁地球環境局監修 :『地球温暖化の我が国への影響 地球環境の行方 』、p.181、中央法規( 1994)