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2024年【序文】

 新型コロナウイルスに触発されて,社会のさまざまな場面でオンラインと対面を組みあわせたハイブリッド形式の採用が進みました.それぞれの良い面を取り入れることで,これが日本の新たな活力の源泉の一つとなることを願っています.

 理科年表2024 のおもな改訂点をご紹介します.各部で,最新のデータへの更新が行われています.来年は残念ながら日食も月食も国内では見られないようですが,暦部のトピックスでは,2022 年に国の重要文化財に指定された『星学手簡』について解説しています.天文の世界では,2021 年末に打上げられたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が大活躍をしており,トピックスで紹介しています.2023 年の夏は,突然の大雨に見舞われたり,交通機関がまひして立ち往生といったことを経験しました.気象部では,年々増える大雨の影響もあって,「日降水量・1 時間降水量・10 分間降水量の最大記録」「年降水量の多い値,少ない値(1 位~3 位)」などの数値の入れ替えも増えています.物理/化学部では,2022 年の国際度量衡総会で決定された新たなSI 接頭語を取り込んでいます.ギガ,テラ,ペタに続いて,新たに1027(ロナ),1030(クエタ),10-27(ロント),10-30(クエクト)が決まりました.そのうち,コンピュータ用語で,ロナバイト,クエタバイトといった言葉を聞くようになるかもしれません.地学部では,読者の関心の高い地理や火山・地震情報を最新のものに更新しています.とくに大きな話題は,日本の島の数でしょうか.これまで日本の島の数は6,852 島とされてきましたが,国土地理院が最新の測量技術を用いて36 年ぶりに再調査したところ,倍以上の14,125 島あることがわかりました.各都道府県でどのくらい増えたのか,「海岸線距離と島しょ数」をチェックしてみてください.生物部でも,「生物の系統図」を最新の文献をもとに刷新しています.トピックスでは,「地球最後のフロンティア」と呼ばれ,宇宙よりもたどり着くのが難しいと言われている超深海の世界について取り上げます.環境部では,「環境」に関するあらゆる情報を掲載しています.とくに,地球上のおもな気候について長期にわたる観測結果や最新の数値を掲載しており,気候変動や地球温暖化をデータから読み取ることができます.

 世界が激動の時代を迎えている今こそ,正しい情報・新しい情報が必要となっています.理科年表は,毎年のきめ細かい改訂により精度の高い最新の情報を提供しています.どうか日本の英知の結晶である理科年表を,皆様の仕事,研究,勉強などに広く役立ててください.

2023 年10 月

国立天文台 台長 常 田 佐 久

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