天文部「新星」をくわしく解説!
新星(nova)とは、白色矮星と普通の恒星からなる近接連星において、恒星から白色矮星の表面に降り積もったガスが起こす核爆発により、急激に明るく輝く現象である。この現象は夜空に突然新しい星が現れるように見えたため、新星 (ラテン語で stella nova)と名づけられたが、現実には、すでに一生を終えた星 (白色矮星)が再び輝く現象である。同様の現象で核爆発により白色矮星全てが吹き飛ばされるもの (Ia 型 )、そして大質量星(太陽の約 10 倍以上の質量をもつ恒星)が一生の最後に起こす爆発(II 型、 Ib 型、 Ic 型)は、新星よりはるかに明るいため、 1930 年代から超新星(supernova)として区別されるようになった(ティコ ・ ブラーエが 1572 年に発見した超新星が「新星」の語源とされているが、現在、これは「超新星」として分類されている )。
新星は、我々の銀河系で 1 年に数個程度発見されている。また、我々の銀河系だけでなく、アンドロメダ星雲などの系外銀河にも発見されている。系外銀河の観測から、発見されないものも含めると、我々の銀河系では 1 年に数 10 個程度の新星が出現していると推測されている。新星は絶対等級で約 -7 ~ -9 等もの明るさ(太陽の数万倍)で輝き、数 10 日から数年かけて次第に暗くなる。最近では、 1992 年にはくちょう座に現れた新星(Nova Cygni 1992、 図 1)が実視等級で約 4 等に達し、肉眼で見ることができた。
図 1 1992 年にはくちょう座に現れた新星。 星の表面が吹き飛ばされる様子がよく見える (http://www.spacetelescope.org/images/html/opo9406a.html) |
白色矮星は、太陽の約 8 倍以下の質量をもつ恒星が一生を終えた後に残される白く小さい星である.その大きさはせいぜい地球程度であるが、質量は太陽程度(地球の約 30 万倍)であるため、表面の重力は地球上の数 10 万倍におよぶ。恒星から白色矮星の表面に降り積もった主として水素とヘリウムからなるガスは、その強い重力によって圧縮され、次第に温度が上がっていく。やがて、降り積もったガスの温度が 1 億度程度になると爆発的な水素核融合が起こり、星は急激に明るく輝く。このときのガスの温度は約 2 ~ 3 億度に達する。この爆発現象を、とくに、新星爆発という (図 2 想像図 )。爆発により、降り積もったガスは吹き飛ばされ、星は次第に暗くなり元の状態に戻る。
爆発の後には白色矮星がそのまま残されるので、恒星から再びガスが降り積もることにより、この爆発現象は繰り返される。通常、再び爆発を起こすまでの期間は数千年以上であるため、人類史上で同じ星が再び新星として観測されることはほとんどない。しかし、白色矮星の質量が大きく(太陽質量の 1.3 倍程度 )、となりの恒星が赤色巨星である場合は、 10 年から数 10 年程度で爆発が繰り返されることがあり、これらはとくに回帰新星 (または反復新星)と呼ばれる。
最近の例では、 2006 年にへびつかい座に現れた新星 (RS Ophiuchi)が回帰新星として知られている。この新星は、過去に 1898 年、 1933 年、 1958 年、 1967 年、 1985 年にも観測されていることから、 20 年程度のサイクルで爆発していることがわかる。
通常は、新星爆発により降り積もったガスはすべて吹き飛ばされるため、白色矮星の質量は変化しない(爆発のときに表面が削られてわずかに質量が減少することもある )。しかし、回帰新星の場合は水素核融合によってつくられたヘリウムが表面に残り、少しずつ質量が増加する可能性がある。白色矮星の質量が太陽質量の約 1.4 倍に達すると、星全体が核爆発を起こして吹き飛ばされ Ia 型超新星になる、または重力崩壊して中性子星になると考えられているが、はっきりしたことはまだよくわかっていない。
【和南城伸也 東京大学(2006年11月)】