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なぜ夕日は赤く、空は青いのですか?

 光や電波のような電磁波が、その波長と同程度以下の大きさの粒子に当たったとき、粒子から2次的な電磁波が発生して周囲に広がる現象を散乱といいます。そのうち光が空気分子に当たったときのように、電磁波の波長に比べて粒が十分小さい場合の散乱のことを、空の青さを説明する理論を研究したレイリー卿の名前をつけてレイリー散乱と呼びます。このレイリー散乱が赤い夕日や青空を作り出しているのです。

 レイリー散乱では、光の波長が短いほど空気分子が多くの光を散乱します。そのため波長の短い青い光は、空気中を通る際にどんどん散乱して私たちの目に入ってきます。したがって空は青く見えます。一方、波長の長い赤い光は、あまり散乱しないで空気を通過していきます。夕方太陽の光が地平線近くから地面を照らすときは空気を通過する距離が長いので、青い光はほとんどなくなり赤い光だけが残っているので、夕日が赤く見えるのです。ビーカーや透明のビンに水を入れ、少量のミルクを入れると、混ざったミルクの分子はレイリー散乱をします。したがって明るい懐中電灯などで照らすと、通過した光は赤っぽくなります。

 レイリー散乱の特徴には、上記のような (1) 短い波長ほど多く散乱させることのほか、(2) 前方散乱と後方散乱が同じぐらい強く、光に直角の方向への散乱が最も弱いこと、および (3) その直角方向への散乱光は偏光していることが挙げられます。前方散乱というのは、微小粒子にぶつかった光のその進行方向側への散乱のことで、逆に来た方向へ戻る散乱を後方散乱といいます。前述の (2) の結果、たとえば太陽が東にあるときは東と西の空は比較的明るく、北、天頂および南の空の色は比較的濃い青になっているはずです。ただし、空気中のエーロゾル 土壌粒子、海塩粒子、煤煙など液体や固体の微粒子 が少ないきれいな空の場合でなければ、その差はよくわかりません。同様に、太陽が東にある場合、(3) によって北、天頂および南の空からくる光は偏光しています。偏光というのは、光の振動の方向が特定の向きに揃っていることで、カメラ用の偏光フィルターや偏光サングラスなどで確かめられます。雲の写真を撮る場合は、偏光フィルターを利用すると、雲と空のコントラストの強い鮮明な画像が得られます。

図 散乱と透過の波長による違い


【参考:数式を使った説明】

【山内豊太郎(2008年 3月)】

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