惑星の定義 2007年版(平成19年版)
2006年8月,プラハで開催された国際天文学連合
(International Astronomical Union, IAU)第26回総会において,「惑星」の定義に関する決議が採択された.それまで惑星の明確な定義は存在せず,水星から冥王星までの9つとされていた.ところが,1992年以降,太陽系の外縁部に数多くのエッジワース・カイパーベルト天体(Edgeworth-Kuiper Belt object, EKBO),あるいはトランス・ネプチュニアン天体(trans-Neptunian object, TNO)と呼ばれる天体が発見され,冥王星も,これらの天体群の1つであることがはっきりしてきた.さらに2005年には,冥王星よりも大きな天体,2003 UB313(Eris)が存在することも明らかになった.惑星よりも大きな(旧来の分類上での)小惑星が出現してしまったわけである.
国際天文学連合では,それ以前から内々に惑星の定義案の検討を始めており,第3部会(Division III)でまとめた3つの案をもとに,天文学者で教育や歴史,広報等に通じた科学者とジャーナリスト7人からなる「惑星の定義委員会」(Planet Definition Committee)を立ち上げ,原案をまとめた.この案は,国際天文学連合総会会期中に会員に示され,第3部会および全体会議で,幅広く議論を行いながら,改定案を練り上げていった.最終的には,大多数の会員が了解する見込みがたった決議案5A,これに一言だけ修正を加えることで,定義委員会の原案に近づける決議修正案5B,また冥王星を代表とするdwarf planetの一群を新しいカテゴリーとする決議案6A,その名前をプルトニアン天体(plutonian object)とする決議案6Bを作成し,総会に提案した.その結果,5A,6Aが可決,5B,6Bが否決され,太陽系の惑星は海王星までの8つとなったのである.今後,新しいカテゴリーの名前や日本語訳も検討がすすめられる予定である.
【 渡部潤一 】
(決議前文省略)
決議5A
国際天文学連合はここに,我々の太陽系に属する惑星及びその他の天体に対して,衛星を除き,以下の3つの明確な種別を定義する:
(1) | 太陽系の惑星(注1)とは,(a)太陽の周りを回り,(b)十分大きな質量を持つので,自己重力が固体に働く他の種々の力を上回って重力平衡形状(ほとんど球状の形)を有し,(c)自分の軌道の周囲から他の天体をきれいになくしてしまった天体である. |
(2) | 太陽系のdwarf planetとは,(a)太陽の周りを回り,(b)十分大きな質量を持つので,自己重力が固体に働く他の種々の力を上回って重力平衡形状(ほとんど球状の形)を有し(注2),(c)自分の軌道の周囲から他の天体をきれいになくしておらず,(d)衛星でない天体である. |
(3) | 太陽の周りを公転する,衛星を除く,上記以外の他のすべての天体(注3)は,small solar system bodiesと総称する. |
注1: | 惑星とは水星,金星,地球,火星,木星,土星,天王星,海王星の8つである. |
注2: | 基準のぎりぎりの所にある天体をdwarf planetとするか他の種別にするかを決めるIAUの手続きが,今後,制定されることになる. |
注3: | これらの天体は小惑星,ほとんどのtrans-Neptunian object,彗星,他の小天体を含む. |
決議6A:冥王星についての決議
国際天文学連合はさらに以下のように決議する:
冥王星は上記の定義によってdwarf planetであり,trans-Neptunian objectの新しい種族の典型例として認められる.
2017年11月追記:TNOおよびEKBOは「太陽系外縁天体」,dwarf planetは「準惑星」,small solar system bodiesは「太陽系小天体」,決議6Aの新しい種族は「冥王星型天体」という和名を使うことが推奨されている.