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タンパク3000プロジェクト 2006年版(平成18年版)

 「タンパク3000プロジェクト」は,ある生物のゲノムにコードされるタンパク質の立体構造を網羅的に決定する,構造プロテオミクス(構造ゲノム科学)に関する日本の国家プロジェクトである.このプロジェクトは,我が国発のゲノム創薬の実現などを目指し,平成14年度(2002年度)からの5年間で約3000種(タンパク質の全基本構造10000種類の約1/3)以上のタンパク質の構造および機能を解析し,特許化まで視野に入れた研究開発を推進することを目的に実施されている.
 このような構造プロテオミクスのプロジェクトが可能になった背景としては,1)ゲノムプロジェクトにより多数の生物種のゲノム塩基配列が解読されてきている,2)タンパク質工学(遺伝子工学)の発展により遺伝子からタンパク質を大量発現させ,迅速に精製を行うことが可能になった,3)シンクロトロンによる大強度のX線や超高磁場のNMR装置が利用可能になるとともに,新しい構造解析・表示ソフトウェアが開発され,コンピュータが発展して構造解析が迅速に行えるようになった,ことが挙げられる.その結果として生命現象を,遺伝子DNAから推定されるタンパク質のアミノ酸配列ではなく,タンパク質の立体構造に基づいて理解しようとする構造プロテオミクス研究が生まれ,日本だけでなく世界的に国家プロジェクトとして推進されるようになった.アメリカは2000年~2004年にPSI-1(Protein Structure Initiative)を実施して様々な大規模解析技術を開発し,タンパク質試料調製から構造決定までを行えるパイプラインを整備し,約1000個の構造を決定した.2005年からはPSI-2が始まり,5年間で3000~4000の構造決定を目指している.一方,EUではSPINE(Structural Proteomics in Europe)などが進められている.イギリス,フランスなどでは,その国独自の構造プロテオミクスプロジェクトも推進され,アジアでは中国や韓国でも構造プロテオミクスプロジェクトが実施されている.膜タンパク質,ウイルスタンパク質など,解析困難な対象に特化した構造プロテオミクスプロジェクトもスタートしている.
 日本のタンパク3000プロジェクトでは,1)理化学研究所が担当するタンパク質基本構造の網羅的解析プログラムと,2)大学を中心とした8つの研究グループが担当するタンパク質の個別的解析プログラムが実施されている.その成果として,この分野の基盤が整備され,2004年度までの3年間に2000以上のタンパク質の構造が決定された.

【 田之倉優 】

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