平成5年【序文】
理科年表は国立天文台が編集し、丸善株式会社から発行している。その編集にあたっては、10人ほどの監修者の方々で編集会議を開き、編集方針についての意見を交換してから、執筆者に担当の部分の原稿を書いていただいている。この他機関として気象庁、海上保安庁水路部、国土地理院、郵政省通信総合研究所などから、貴重な資料の提供を受けている。
また、例えば暦部、天文部については、国立天文台内に編集会議をもうけ、執筆担当者が集まって、全体としての編集方針や相互批判を行い、理科年表をよりよいものにしたいと努力してきた。それでも、全体として統一のとれていない項目もいくつか残っているが、それらはやむをえない事情によるものである。その過程で、読者の方からの投書などによるご意見も取り入れるように努めてきたが、頁数を増やせないなどの制約のために、実現できない点も多かった。頁数を抑えることは、理科年表の一つの編集方針であるので、ご意見を寄せられた方も、何卒お許しいただきたい。
このようにして、理科年表がデータ・ブックとして、一定の評価を世間から受けてきたことは、編集者の一人としては誇りに思っている。そのために、理科年表が学校の教材として広く使われるようになってきたが、教材として使いやすくということも、これからの大きな留意事項と考えている。そして、理科年表をうまく使って、理科の授業が改善されるみちが開かれるのではないかと期待している。
自然科学のすべての分野での、最近の発展は目覚ましいものがあり、測定の技術も飛躍的に進歩して、理科年表に掲げられているデータが改良されたり、新しいデータが発表されたりする例は少なくない。理科年表のデータの数値は古いのではないかとの、読者の声を聴くことがある。理科年表はこのようなデータの受け入れについては、やや保守的な立場をとっている。すなわち、学界で多くの人から認められたものしか受け入れていない。このことによって、掲載するデータを毎年毎年変えるという混乱を避け、一旦変えたデータは少なくとも何年かは変えずにおけるようにと考えている。
ともあれ、理科年表は読者の方のためのものである。理科年表をさらに使いやすく、よいものにするために、執筆担当者も努力するつもりであるが、読者の方々のより一層のご協力もお願いしたい。
1992年 7 月
国立天文台 台長 古在由秀