平成17年【序文】
理科年表2005年版を、お届けします。
科学の役割はますます拡がり、多様化しています。70年余の歴史を持つ理科年表は、「21世紀の理科年表」を合言葉に自然界のデータブックとして社会のさまざまなニーズに応えるべく、編集委員会を中心に充実強化の作業を続けてきました。幸いにも理科年表への期待は大きく、さまざまな研究機関をはじめ第一線の研究者の方々の強力な支援が拡がって、確かな手ごたえを感じています。
2005年版理科年表の大きな前進は、気象庁、国立環境研究所、および国立天文台の三つの機関の協力と、浅島誠先生をはじめ多くの先生方のご尽力によって「環境部」が新設されたことです。理科年表への環境データの本格的な導入は、市民や自治体、企業、学校などの多様な要望に応えるためにもぜひ必要と考え、理科年表編集委員会などで数年にわたって検討を続けてきた懸案でしたが、若干の紆余曲折を経て、実現の運びになりました。まことにうれしいことです。ご尽力いただきました関係の諸先生や研究機関、関係者の方々に、この場を借りて改めてお礼を申し上げます。なお環境データの重要性にかんがみ、さらに充実したデータを含む理科年表別冊『環境編』も準備中です。ご期待ください。
そのほか、2005年版における主な変更・改良点の概略は、以下のような部分です。暦部、天文部では、暦など例年のデータ更新のほか、微小小惑星など新しいトピックスを紹介しました。気象部、生物部のデータの一部は、環境部に集中しました。物理/化学部では、音、原子核、溶解度などのデータを更新あるいは追加しました。地学部では、海洋や火山関連、最近変更の多い都市関連データを更新しているほか、地震関連データは大幅に強化されました。生物部では生理分野、主な業績などのデータを更新し、単為発生マウスなど関心の高いトピックスを紹介しています。
理科年表は、全分野にわたって常にデータを厳選し更新しつつ、扱いやすいページ数の範囲で「自然界の辞典」としての現代的役割を果たすべく、各分野の編集委員等の諸先生に、毎年人知れぬご苦労をお願いしています。世界的にもユニークなこの理科年表をさらに有効なものとして充実してゆくため、広い読者、利用者、愛好者の皆様からの積極的なご指摘やご意見をお待ちしています。
2004年 10 月
国立天文台 台長 海部宣男