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平成18年【序文】

 理科年表2006年版を、お届けします。
 『理科年表』は大正14年、理科学生のためのデータ集として創刊以来、多くの研究者の協力で科学諸分野のデータを加え、高校・大学の先生、設計技師や工場で働く技術者にも広く支持されてきました。日本の技術力が世界に雄飛した1980年代前半には年8万部を超える部数を記録していた、超ロングセラーです。
 年毎に更新増補を重ねてきた『理科年表』、現在も広範な自然と科学を網羅した世界唯一のデータブックとして、教科書や科学記事の基礎資料を提供するなど社会の高い信頼を得ています。しかし一方、日本社会の「ものづくり」のパワーは次第に衰え、学校における理科教育も低下しました。『理科年表』の販売数も、これらと軌を一にして低下の一途をたどるようになりました。『理科年表』は、日本社会の科学・技術のバロメータでもあります。
 日本の科学と技術の力を回復することはいうまでもなく重要な課題ですが、同時に、日本社会における科学の役割が変化してきたことも事実です。『理科年表』の役割も、大きく変わってきた、また変わるべき部分があると思われます。かつての「まなび」や「ものづくり」一辺倒ではなく、市民が環境や災害など社会の変化に対応し、自ら将来も見据えつつ判断してゆくための科学へ、現代社会が要求するそうした市民の科学のためのデータを提供してゆくのは、現代の『理科年表』の新しい大事な役割でありましょう。
 理科年表編集委員会ではそうした視点から、『21世紀の理科年表』への発展を目指す新たな試みを続けてきました。その大きな成果のひとつが平成17年度版から加わった「環境部」であり、また今年度発行される『理科年表 環境編』です。この平成18年度版では、環境部はもちろん気象データや地震・火山などの自然災害、生物データの拡充をはじめ、各部のデータを強化しました。さらに現在、家庭や学校で理科年表のデジタルデータをネット上で縦横に駆使できる「理科年表オフィシャルサイト(仮称)』の実現に向けて、検討を進めています。
 「理科年表』にご尽力頂いている多くの研究者・出版社の皆様に感謝するとともに、世界的にユニークな自然界の辞典『理科年表』をさらに広く社会に役立たせるため、利用者の皆様からのご指摘、ご意見をお願いする次第です。

  2005年 10 月

国立天文台 台長 海部 宣男

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