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平成25年【序文】

 理科年表2013年版をお届けします.
 2012年は,東日本大震災からの復興が続いた年でした.津波による被害の大きかった東北地方太平洋岸では,目に見える形での復興はまだ十分に進んでいないように感じられ,被災された方々には苦渋の日々が続いていることと思います.改めて,お見舞い申し上げます.
 2012年には珍しい天体現象がいくつか日本で見られました.とくに5月21日に起こった日食では,九州,四国,本州南岸沿いで金環日食となりました.本州で見られる金環日食としては,1883年以来129年ぶりでしたので,幸い天候にも恵まれ多くの方が楽しまれたのではないでしょうか.
 さて,今年版で改訂したおもなデータや解説は,以下のとおりです.
 「暦部」では,東日本大震災によって日本の経緯度原点が約 30 cm東に移動したことに対応しました.「天文部」ではトピックスとして,"宇宙の加速膨張の発見"(2011年のノーベル物理学賞のテーマ)と"「はやぶさ」によって持ち帰られた小惑星イトカワサンプルの初期分析"を掲載しました.
 ここ数年来,毎年のように気象データの記録が塗り替えられています「気象部」では,各地の降水量や最高気温のデータ等を2011年までの数値に更新しました.地球の脈動がわかる「地学部」でも同様に更新を行い,とくに国内外で多くの被害を引き起こした地震は,その膨大な発生回数に驚かされます.
 「物理?化学部」では,2010年CODATA 推奨値が発表されたことに伴い,基礎物理定数を最新の値に更新しました.
 ヒトゲノムの研究の進展には著しいものがあります.「生物部」のトピックス"エピゲノム"では,開発から現在に至るまでの道のり,これまでに何種類が解読されたのかなどを解説しました.
 「環境部」では,原発事故以降関心の高い放射線に関するデータも,本年は 2 ページに拡大して情報量を増やしました.
 どうぞ,理科年表2013年版のデータをお使いください.

  2012年 10 月

国立天文台 台長 林 正彦  

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