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最近発見された天王星の特異外衛星

 トロント大学のGladmanらは地上観測(パロマ天文台の5mヘール望遠鏡にCCDカメラを装着)によって天王星に新たな衛星を2個発見した.仮の名前はS/1997U1,S/1997U2である(仮の名前の最初のSはSatellite(衛星)の頭文字であり,1997は発見年,UはUranus(天王星)の頭文字である).この衛星の暫定軌道要素は表に与えてある.衛星U1とU2の軌道長半径は天王星の赤道半径の304倍,253倍,公転周期は1.8年,1.4年である.軌道傾斜角は90度を越しているので,新衛星の軌道は天王星の公転方向とは逆である(逆行).
 観測期間が衛星の公転周期に比較して短いので,表の軌道要素の決定精度はよくない.離心率については,各々0.2,0.4を仮定して他の軌道要素を決定している.軌道要素の値そのものはこれからの観測によって大きく変化するかもしれないが,逆行衛星であることは確かである.
 衛星に働く主な摂動は母惑星の赤道部の膨らみによる摂動(J2摂動),太陽による摂動である.衛星が母惑星に近いとJ2摂動が大きくなり,母惑星から離れるにつれて,太陽摂動は大きくなる.2種の摂動のうちJ2摂動が大きい領域を運動している衛星をタイプ1,太陽摂動が卓越している領域を運動している衛星をタイプ2と呼ぶことにする.
 巨大惑星である木星,土星,海王星には2つのタイプの衛星が存在しているが,今まで天王星にはタイプ1の衛星しか発見されていなくて,天王星は例外と考えられていた.しかし天王星にもタイプ2の衛星が発見され,巨大惑星は例外なくタイプ2の衛星を持っていることになった.タイプ1の衛星の軌道面は海王星のトリトンを除いて母惑星の赤道面に近く,順行していて離心率は小さい.タイプ2の衛星のうち,外側を公転している衛星は逆行している(木星のパシファエ,シノプ,カルム,アナンケ,土星のフェーベ).例外は海王星であり一番外側のネレイドは順行していて,内側のタイプ1の衛星であるトリトンが逆行している.
 タイプ2の衛星は太陽摂動が大きく,衛星の軌道要素の変動は大きい.表の軌道要素を用いて,軌道の長期変動を調べてみると,U1の離心率は約2000年周期で0.17から0.33まで変動し,U2の離心率は約2200年周期で0.27から0.41まで変動する.今まで発見されているタイプ2の衛星は全てヒル圏内を運動しているので,上に述べたように軌道は大きく変動するが惑星から脱出することはありえない.
 タイプ2とタイプ1の衛星の力学的性質と物理的性質の差から両者の起源は異なると考えられている.タイプ1の衛星は母惑星と同時に生まれたと考えられている.タイプ2の衛星は惑星形成時に惑星に捕獲された微惑星であると考えられているが,捕獲へいたる物理的力学的シナリオはいまだ確立していない.

(表)新たに発見された天王星の衛星の暫定軌道要素(基準面は黄道)

衛星名 軌道長半径 離心率 軌道傾斜 近点引数 昇交点経度 公転周期
  (10^6km) (度) (度) (度) (日)
U1 7.77 0.2 146.4 141.9 185.8 654
U2   0.4 153.4 256.3 146.4 495

【 木下 宙 】

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