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海外にも広がる日本の望遠鏡設置および観測活動・・・南へ、南へ

 観測天文学の発展に伴い,また天文学における国際協力の発展の一環として,日本の研究者グループや研究機関による国外への観測施設の設置や運用が盛んになってきた.1999年のすばる望遠鏡の竣工がその顕著なケースであるが,引き続き2000年にも大学のグループを主体とする2つの特徴的な望遠鏡が竣工した.理科年表の本体の表には現在取り上げられないカテゴリーのものもあるので,海外望遠鏡をここでまとめて紹介したい.海外設置は次の2つに大別でき,付表の海外望遠鏡一覧(長期・定常的に運用されているもの)にはこの分類も含めて示した.

分類
名称
種類
所属
所在地
竣工ないし運用開始
1,2 なんてん サブミリ電波望遠鏡 名古屋大学 チリ,ラスカンパナス 1996
1,2 東大60cm サブミリ電波望遠鏡 東京大学 チリ,ラシヤ 1994
1 CANGAROO ガンマ線望遠鏡 東京大学宇宙線研 オーストラリア,ウーメラ 1992,II号機 1999
1 すばる 光学赤外線望遠鏡 国立天文台 ハワイ,マウナケア 1999
1 Magnum 赤外線望遠鏡 東京大学 ハワイ,ハレアカラ 2000
1,2 名大1.4m 赤外線望遠鏡 名古屋大学 南アフリカ,サザーランド 2000
1,2 太陽中性子検出装置ネットワーク 太陽中性子 名古屋大学 世界各地 I号機1990,1998完成
1 空気シャワー観測装置 高エネルギーガンマ線 東京大学宇宙線研 チベット,ヤンパーチン 1990~


1.主に高度,気象の要素から観測の適地を求めて望遠鏡などの観測設備を建設・設置・運用する.観測装置やその一部などを持参する場合もある.海外展開の先駆けとなった宇宙線観測は主にこちら.
2.特定の地域にないしは時間的に限定された現象や,それと関連して時間的ないし空間的ないし波長横断的なコーディネートの必要なもの.海外展開のもう1つの大きな先駆けであった日食観測はこちら.
1+2.銀河面全体や広い天域をカバーする観測.
 天文研究用の観測装置は,ビデオカメラのように設置したら,あとは電送されてくる画像をモニターすればよいというものではなく,より良いデータを定常的に得るために現地で不断に多様な努力をしなければならない.リモート観測に特化させた試験装置や設備も出現しつつあるが,多くの場合はリモート制御やモニターは限定された観測であって,結局は現地での調整・整備や試験観測をある時期・ある期間,要することになる.観測手段としての競争力ないしは魅力を維持するためには,ハードウエアもソフトウエアも常に装置の維持と改良や新規開発を続ける必要がある.空飛ぶ天文学者,海を渡る小包が増えつつある所以である.ところで空気も水蒸気も少ないほどいいという天文観測にとっての適地は,人間にとって快適な環境ではない.また新しいサイトを探すための実地調査ではインフラストラクチュアの未整備な地域も踏破しなければならず,天文学者変じて探検家のような有様になることもある.研究の後継者養成という点で,海外進出がマイナスの要素とならず,こうした困難を乗り越える世代が成長しつつある.国内のプロジェクトとのタイアップを続けながら,制度的にいまだ未整備な海外施設・設備の運用を工夫してゆきたいものである.
 上記以外の観測装置等を,以下に列挙する.
Kyoto Polarimeter, PASP, PASP II, LEWIS, MICS, TRISPEC, SIRIUS 赤外線観測装置
SDSS 光学サーベイ望遠鏡のカメラ製作等
JCMT SCUBA polarizer 観測装置の一部
MOA project 観測装置製作
UH2.2m 光学赤外線望遠鏡の観測時間(計画中)

【 林 左絵子 】

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