なぜ夕日は赤く、空は青いのですか? 【参考:数式を使った説明】
粒子の円周の長さが波長の 10 分の 1 以下のとき、散乱による減衰係数 kR(λ) はおよそ波長 λ の 4 乗に反比例し、次式で表わされます。
kR(λ) = 0.008735λ-4.08
ある地点を通過するときの、波長λの光の強さを I0(λ) とし、そこから距離 m を通過後測定した光の強さを I(λ) とすると
I(λ) = I0(λ)・exp(-k(λ)・m)
となります。このとき単位長当たりの減衰の程度を示す係数 k(λ) を減衰係数または消散係数といいます。光の通過距離の単位長として 1 気圧の大気の垂直方向の空気量を採ります(この方法で測った m を大気路程といいます )。
kR(λ)の式を I(λ) の式の k(λ) に代入して、青い光と赤い光に相当する波長 0.4 および 0.7 μm における I(λ) / I0(λ) を計算すると、それぞれの透過率が求められます。その結果、ほこりや水蒸気のない空気では大気路程 m が 1 のとき、 0.7 μm の光が 3.6 % しか散乱しないのに対して、 0.4 μm の光は 31 % と 10 倍近くも散乱します。このように空気中では波長の短い青い光のほうが波長の長い赤い光よりも多く散乱されるので空は青く見えるのです。
地球大気で散乱した波長の短い光の半分は地表のほうに向かいますが、残りの半分は宇宙空間に向かって出て行きます。だから宇宙から見た地球も青く見えます。
一方散乱して減衰した残りの光について考えると、 m = 1 のとき 0.7 μm の光が 96.4 % 透過するのに対して、 0.4 μm の光は 69 % しか透過しません。
夕方になると、大気路程 m はどんどん長くなっていきます。太陽が地平線上にあるとき、もしも大気が平らな板のようなもの (平板平行大気という)であれば m は無限大になってしまいますが、現実にはスイカの皮のように球面状になっているので、 m は約 36 という有限値をとります。大気路程 m が 20(太陽高度 2 度ぐらい)になると、 0.7 μm の光が 47 % 透過するのに対して、 0.4 μm の光は 0.1 % 未満となります。これらは空気中にエーロゾルや水蒸気が存在しない仮想的な大気での計算ですが、空気を通ってきた光にはもはや青い色はほとんど含まれていないことがわかります。このため直達日射はもちろんのこと、空の色まで赤くなっていきます。これが夕焼けです。
空気分子が光の波長より十分小さいのに対し、雲粒の大きさは直径約 0.01 mm すなわち 10 μm 程度あります。粒子の円周はその約 3 倍あるわけで、このように円周の長さが光の波長よりも大きい場合の散乱は、これも研究者の名前をとってミー散乱と呼ばれ、散乱量はあまり波長によらないことがわかっています。したがって雲の粒子は、すべての波長の光を散乱させるので、白く見えます。空気中のエーロゾルが多い場合もミー散乱のため空は白っぽく見えます。
【山内豊太郎(2008年 3月)】