理科年表オフィシャルサイト

もっと身近にサイエンスを      国立天文台 編

MENU

2025年【序文】

 人類の叡智は多くの知識と記録の積み重ねの上に成り立っています.中でも理科年表は,科学技術の基本となる物理・化学定数,天文・気象現象や地学・生物学の最新の知識と記録,さらには人類の活動にも関係した環境に関する記録などを広く掲載しています.2024年は年初から能登半島地震が発生,夏にも記録的猛暑に加え豪雨災害が発生しました.理科年表が,科学技術のさらなる発展の礎となり,自然災害の克服に貢献,人類の幸せな未来の構築に寄与することを願いながら,2025年版をお届けします.

 理科年表2025のおもな改訂点をご紹介します.各部で,最新のデータへの更新が行われています.暦部のトピックスでは,土星の環について解説していますが,2025年には,環がほとんど見えなくなる『環の消失』が起こります.また,月食が2回見られます.天文関係では,太陽活動が活発化しており,また重力波の観測も進んでいます.トピックスでは,宇宙から降り注ぐ粒子である宇宙線は,どのような天体現象が起源なのかについて,説明が難しい超高エネルギーの宇宙線の起源も含め,最先端の研究が進展しつつある様子が解説されています.また,市民参加天文学の例としてすばる望遠鏡で撮影した銀河を2 万個以上調べた研究も紹介されています.今年は日本各地で猛暑が観測され,観測史上最高気温が観測されました.線状降水帯やゲリラ豪雨も増えており,気象部では,気温に加えて降水量や数値の入れ替えも増えています.物理/化学部では,基礎物理定数CODATA 2022の推奨値が2024年5月に公表されたことなどに伴い,「基礎物理定数」「エネルギー換算表」などの数値が改訂されています.地学部では,最大規模の構造物や掘削記録をまとめた「世界と日本における最大規模の人工構造物・掘削」が新規掲載されました.その他,岩石分布や火山の溶岩・マグマの粘度などが大改訂されました.生物部では,ちょうど2024年ノーベル生理学・医学賞の研究対象となった「マイクロRNA」などの解説をトピックスで行っています.また「植物分類表」「藻類分類表」「菌類分類表」を更新しています.環境部では,気候変動や地球温暖化など,人為的要因が影響しているかもしれない地球上のおもな気候について,長期にわたる観測結果や最新の数値を掲載しています.またトピックスでは言葉の歌起源説が紹介されています.

 以上のように,理科年表は,毎年のきめ細かい改訂により信頼性の高い最新の情報を,様々なトピックスも交えながら,提供しています.どうか皆様のお仕事,研究,勉強などに広くお役立てください.

 

2024 年10 月

国立天文台 台長 土 居  守

閉じる