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気象部「相対湿度の月別平年値」をくわしく解説!

 大気の湿り具合すなわち大気が水蒸気を含んでいる度合いを湿度という。単位体積の空気が水蒸気をこれ以上含めない水または氷の表面と大気中の水蒸気との水分子の交換が平衡状態になっている という状態――飽和という――のときの水蒸気量は気温に依存し、気温が高いほど飽和水蒸気量が大きい。


 湿度には、つぎに示すように多くの表わし方がある。
絶対湿度、相対湿度、比湿、混合比、水蒸気圧、露点 露点温度ともいう )、露点差湿数ともいう )。ここでは、気象観測で用いられることが多い水蒸気圧、相対湿度、露点について述べる。



( 1 ) 水蒸気圧 : 大気中で水蒸気が占める分圧を水蒸気圧または単に蒸気圧という。また、大気が飽和しているときの水蒸気圧を飽和蒸気圧という。同じ気温でも水に対する飽和蒸気圧は氷に対するものより少し大きい。


 気温 t における飽和蒸気圧 E を計算するには、気象庁では少し複雑な Goff-Gratch の式を用いているが、実用上はつぎの Tetens の式などを使用してほとんど問題ない。

E =6.11 × 10 at/( b + t ) hPa )

  ここで、 a = 7.5、 b = 237.3 (水の場合)、 a = 9.5、 b = 265.5氷の場合 )



2相対湿度 : 空気中の水蒸気の分量の、同温で飽和している空気が含む水蒸気量に対する割合を相対湿度という。一般に、単に湿度といえば相対湿度のことを指す。これは水蒸気圧で考えても同じなので、通常は空気中の蒸気圧の、同温の飽和蒸気圧に対する比を、百分率 で表わす。空気中の水蒸気量( 圧が同じでも、気温が高くなると飽和水蒸気量 が高くなるので、相対湿度は下がる。





3露点 : 水蒸気を含んでいる大気を冷やしていくと、いつかは必ず飽和する。このときの温度を、露点 または露点温度という。湿球が凍っている場合など氷に対して求めた飽和する温度は、霜点または霜点温度ともいう。 ℃摂氏を用い、 0.1℃ を最小単位とする。露点が高いほど含まれている水蒸気量が多く、気温と露点の差露点差または湿数 が大きいほど相対湿度が小さい。



  湿度計の設置場所や環境条件は、前節の気温観測の場合とほぼ同じである。とくに、建物の冷暖房のための排気口や自動車の排気ガスなどの影響を受けにくい場所で観測するよう配慮する必要がある。



 低温、低湿時における湿度を精度よく測定することは、長い間の懸案であった。観測時刻には乾湿計 1950 年から通風乾湿計が、自記記録用には毛髪湿度計が古くから用いられていたが、電気信号を出せる湿度計として塩化リチウム露点計が、 1961 年から航空気象観測で、また 1971 年から地上気象観測で使用されるようになった。 1996 年からは静電容量型の電気式湿度計が順次導入されている。



 日平均湿度のほか日最小湿度も求めている。これは明け方気温が下がると湿度が 100 % 近くになることは珍しくないので、日最大湿度というものにはあまり意味がないが、一方日中どこまで湿度が下がるかはその日の気象状態を反映しており、また乾燥は火災に結びつくので監視する必要があるためである。


 都市化に伴って乾燥化が進むといわれている。湿度の統計例として東京における年平均湿度の経年変化を図に示す。

【山内豊太郎(2006年11月)】




図 東京の年平均湿度 気象庁提供 )

【 参考文献 】
竹内均監修 :地球環境調査計測事典 第 1 巻 陸域編 ( 1 )、p.13 ~ 15、フジ ・ テクノシステム2002 )
気象庁編 :地上気象観測指針 、p.37 ~ 42 、気象庁2002 )

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