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気象部「風速の最大記録」をくわしく解説!

 大気の動く速さ、すなわち単位時間 ( 通常は 1 秒間 ) あたりの風程大気が動いた距離 を風速という。 m/s の単位で表わす。風向や風速は絶えず変動している 風の息というので、瞬間値と平均値を観測する。通常、単に風速といえば観測時前 10 分間の平均値を指すが、航空気象観測では 2 分間平均値が用いられる場合もある。とくにある時刻の風速を示したいときは瞬間風速を用い、通常は最大瞬間風速ある期間内の瞬間風速の最大値 として使用する。風速が 0.2 m/s 以下の場合を静穏 ( calm ) という。 1 日の平均風速は、

1 日の風程 ÷ ( 60 × 60 × 24 )

から計算するが、地域気象観測 アメダスでは毎時の値の 24 回平均から求める。

 なお、気象庁が発表する瞬間風速の観測値は、これまで風速計の測定値 0.25 秒間隔がそのまま用いられてきたが、 2007 年 12 月 4 日 から 3 秒間の平均値0.25 秒間隔の計測値 12 個の平均値に変更された。

 また、これまで瞬間風速を観測していなかったアメダス観測点約 230 ヵ所についても、 2008 年 3 月 26 日から新たに瞬間風速の観測を開始した。

 航空気象観測では風速の単位として kt ( ノット ) が使用される。 m/s との換算係数は次のとおり。

1 m/s = 3.6 km/h = 1.944 kt , 1 kt = 0.514 m/s

 一般に地表付近の風速は、地表面の摩擦の影響で上空に比べて弱い。どの程度弱くなるかは大気安定度や地表の粗度によって異なるが、大まかには次式で表される「べき法則」にしたがうといわれている。

VZ = VR (Z / ZR) 1/n

 ここで、VZ、VR はそれぞれ地上からの高さ Z m、基準の高さ ZR m における風速を表わす。これまでの観測結果から、地表面の状態と n との関係は次のようになる。

地表面の状態
n
平野、草原
7
森林、高い建物のない市街地、住宅地
4
大都市の郊外周辺、市街地
3
大都市の中心付近
2

 Z=100 m、ZR=10 m、VZ=10 m/s のとき、上の表の n を用いて計算すると、 n = 7 では VR = 7.2 m、n = 2 では VR = 3.2 m となる。これから 100 m 上空では同じように 10 m/s の風が吹いているとき、地上 10 m では大都市は平野の半分以下の強さの風しか吹かないこと、また地上 100 m で測った風は、平野の地上 10 m で測った風の約 1.4 倍の強さがあることなどがわかる。

図 風のべき法則
風工学研究所編 :『これだけは知っておきたいビル風の知識』より )

 

 世界気象機関WMOは、風向・風速計を、平らな開けた場所の地上 10 m の高さに設置することを標準にしている。ここで開けた場所とは、風速計と障害物 樹木や建物などの距離が障害物の高さの少なくとも 10 倍以上ある場所と定義している。

 現実には、わが国で、特に都市域でこの条件を満たすことは、かなり難しい。実際の各地の気象台などでは、建物の屋上中央付近に塔または台を作り、その上に測器を設置しているものが多い。この場合は地上からの高さが 10 m を越えることが普通である。特に高層建築の多い大都市では、付近のビルの影響を避けるため、設置高度が 100 m 近くになることさえある。これはもはや地上風とは呼びにくいが、地上 10 m 付近の風はビルなどのためにその地域の代表性がなくなっているので、ほかに良い設置場所がないからである。 それに対し、地域気象観測アメダスでは、 5 m × 6 m の露場中央に長さ 6 m の支柱を立て、その先端に風速計を取り付けたものが標準になっている。このように風速計の設置高度が低いときは、特に注意して場所を選定する必要がある。

 このような状況から、同一地点でも観測環境が変わった前後の記録を正確に比較することや、設置高度が 100 m の地点と 6 m の地点を同列に扱って比較することは難しい。

 このように観測環境の違い、特に風速計設置高度の違いは、風速の気候値に明らかな差をもたらすが、記録的な強風が観測されるのは台風襲来時という特別な場合に限られていることもあり、ここでは観測環境の差は無視して扱うことにする。


最大風速、最大瞬間風速の記録


 最大風速の国内最大記録は、理科年表の「気温・降水量・風速の 1 位~ 10 位」の項に出ているように 1965 年 9 月 10 日に室戸岬測候所の 69.8 m/s である。 一方、最大瞬間風速の国内最大記録としては、 1966 年 9 月 5 日第 2 宮古島台風のときに宮古島で 85.3 m/s が観測されているいずれも山岳測候所における観測値を除いて集計 )。

【山内豊太郎(2008年 4月)】

【 参考文献 】
風工学研究所編:『これだけは知っておきたいビル風の知識』、p.22、鹿島出版会1984 )
『気象年鑑 2007 年版』、気象業務支援センター

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