引張り強さ
この表は、物体(固体 )がどの程度の引張りの強さで破壊するかが挙げられている。 1 m2 に何ニュートンの力が加わると壊れるかであるが、多くの固体では 108(1 億パスカル )前後である。鉄を例にとれば鋳鉄が 1.0 ~ 2.3 × 108 、ついで鍛鉄の 2.9 ~ 4.5 、鋳鉄の 4.0 ~ 6.0 、鋼鉄の 7.0 ~ 10.8(いずれも × 108 )で、さすがに鋼は強く、鋳物(いもの)は弱い、革ベルトが 0.3 ~ 0.5(× 108 ) というのもおもしろい。鉄に比べたら、革などはるかに弱い感じがするが、それでも鉄の 1/10 の強さがある。ズボンのベルトなどが切れてしまうのはよく経験することであるが、これは使用中に材料が劣化してしまう、つまり材料を形成する分子の配列があちこちで不規則になり、その不規則な部分が本来の強度の 1 万分の 1 や 10 万分の 1 にまで減ってしまうからにほかならない。要は、新品なら皮でも頑丈なのである。
また、この表には、物質を針金状にした場合の破壊強度も併せて掲載されている。単なるアルミニウムは 108 程度だが、これに銅 (ほぼ 4 %)、マンガン(ほぼ 0.5 %)、マグネシウム (ほぼ 0.5 %)を混ぜたジュラルミンは 4.0 ~ 5.5 × 108 にもなり、航空機などの材料に用いられるのも当然だろう。タングステンの値が 15 ~ 35(× 108) と大きいことからもわかるように、白色電球のフィラメントにこれが用いられるのは、もちろん融点が高い (高温でも融けにくい)のが重要な理由だが、力学的に強いのも原因の 1 つになっている。
ピアノ線 18.6 ~ 23.3(× 108 ) も最も強い針金の 1 つであり、さまざまな道具に用いられているのはよく知られている。
【理科年表編集委員会(2006年11月)】