地学部「日本のおもな山」をくわしく解説!
山の高さは、これまで国土地理院が測量のために設置した三角点の値や地図を作成するときに標高を計測した標高点の値が、山の高さとして代用されてきました。 このため、三角点、標高点は必ず山の頂上にあるという固定的な考え方が、多くの人に生まれています。しかし、厳密にいうと三角点の高さは三角点の置かれた位置の高さであり、標高点も必ずしも山の頂上の高さとは限らないのです。
国土地理院では、昭和 63 年から平成 2 年にかけて全国の著名な山を対象に標高値の調査を実施し、調査結果をとりまとめ平成 3 年に「日本の山岳標高一覧 -1003山- 」として公表しました。
この調査は、山の高さをより詳しく知りたいという地図利用者の要望に応えて行なったもので、これまで著名な山にもかかわらず高さがなかった山、最高地点が別の峰にある山、高さに誤りのある山などがあった現状の解消と三角点、標高点に対する固定的な考え方の改善を図ることを目的に行なったものです。
調査対象は、国土地理院が刊行する 2 万 5 千分の 1 地形図に山名の記載のある約 16000 の山の中から、全国的に著名な山をはじめとし、登山やハイキングの対象となる山、信仰・歴史に関する山など多方面から選定した 1003 の山です。山には単独の山(図 1)、複数の峰を持つ山(図 2)があります。複数の峰を持つ山については総括する名称を一つの山としていますが、最高峰を含む個々の峰についても著名なものは山頂として調査を行なっています。
図 1 単独の山 : 男体山 |
図 2 複数の峰を持つ山 : 阿蘇山 |
調査の方法は、最新の 2 万 5 千分の 1 地形図で標高値がない山、別の場所に高い地点がある山を調べ、空中写真を使い写真測量により標高値を計測しています。また、写真測量では計測できない山については、現地に行って直接測量した山もあります。地形図上での調査で三角点、標高点が山のほぼ頂上にあると判断されたものは、三角点、標高点の値をそのまま採用しています。
計測は、国土地理院の測量作業規程に基づき行なっています。三角点の場合は高さの精度は 20 cm 、 2 万 5 千分の 1 地形図における標高点の精度は、等高線間隔 ( 10 m ) の 3 分の 1 で概ね 3 m を目標値としています。しかし、写真測量では写真の縮尺などにより、細かい起伏については判読できない可能性があるほか、山頂が樹木で覆われている場合は測定値の精度が低下することがあります。このため、山の高さは精度的に数 m 程度の幅の不確定さを伴っています。
調査において、改めて写真測量等により山頂を計測した山は 1003 山のうち約 140 山です(表 1 )。その他の山は、 2 万 5 千分の 1 地形図に表示されていた三角点、標高点の値を山の高さとして採用しています。このうち、約 700 山は三角点の値で全体の約 70 % を占めています。
表 1 新たに計測した山の種類別内訳 |
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この調査は、あくまでも 2 万 5 千分の 1 地形図レベルのものであり、大多数の山は地形図と写真測量により調査をしています。このため、現地の状況とは必ずしも一致するものではないことをご理解願います。
いずれにしても、現時点では国土地理院の三角点、標高点のデータ以外には山の高さを同一の基準で全国的に計測したデータはないこと、データがより山頂の高さに近い値であることなどから、これらの値を山の高さとしていることが現状です。
大切なのは、三角点、標高点が必ずしも山頂を意味するものでないこと、三角点、標高点の高さ自体にも測量の誤差があることを知ることではないでしょうか。
【国土地理院 測図部基本情報調査課(2006年 4月)】
< 調査作業以降標高値を改定した山 >
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* 安達太良山 < 鉄山 > については、最高地点の位置を変更しましたが、メートル位での高さの変更はありませんでしたので、同数値となっています。 |
一等三角点 : 筑波山 (1 ) |
筑波山(2 ) |
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一等三角点 : 立山 (1 ) |
立山(2 ) |