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環境部「サクラの開花日」をくわしく解説!

 サクラの類は、日本を主としてアジア東部に分布し、その種類も多い。主に観測の対象とされるソメイヨシノは江戸末期から始まる品種で、九州から北海道の石狩平野あたりまで栽植されている。ソメイヨシノはエドヒガンとオオシマザクラとの交雑種で、種子ができないため自然に繁殖することができない。したがって全国津々浦々にあるすべてのソメイヨシノは、元々 1 本の木から接ぎ木などの方法で人が増やしたクローン植物である。その結果、遺伝子が同じなので同一気候地域内における開花時期の個体差が少なく、また咲いてから散るまでの期間が 1 ~ 2 週間と短いので比較的幅の狭い開花帯が日本を北上する。この開花帯は桜前線などと呼ばれ、季節の移ろいを知る指標として絶好の目安である。

 気象庁では、 1 本の木に 5 ~ 6 輪以上の花が開いた状態を開花と定義し、そうなった最初の日をサクラの開花日としているが、全国 82 地点を平均したサクラの開花日は、 2004 年までの 50 年間で 4.2 日早くなっている。この傾向は地域による大きな差はない。また、全国の大都市 6 地点の平均では 50 年間で 6.1 日早く、中小規模の都市 11 地点では 2.8 日早くなっている。この変化量の違いは、都市化による気温の上昇が、植物季節現象に影響を与えたものと考えられる。

 サクラは前年の夏に花のもととなる花芽 ツボミの前の茶色い段階を形成し、そのまま生長することなく休眠に入る。花芽はその後、秋から冬にかけて一定期間の寒さにさらされると休眠から覚め 休眠打破 )、春先の気温の上昇とともに生長し開花する。 2001 ~ 2005 年の開花状況を見ると、 2001 ~ 2004 年は「平年より早い~かなり早い」地点が多かった。特に 2002 年は、開花を観測した 96 地点のうち 64 地点で最早値を更新 タイ記録を含むした。これは、 3 月の月平均気温が全国 149 地点のうち 103 地点でそれまでの最高値を更新するなど春先の著しい高温が影響したものと考えられる。一方、 2005 年はほとんどの地点で平年並か平年より遅くなった。これは 3 月の気温が西日本で低かったことに加え、前年の秋から 12 月中旬にかけて全国的に高温となり冬の寒さが不十分だったことが影響したものと思われる。

 気象庁は、 1951 年から関東地方、 1955 年から全国沖縄・奄美地方を除く を対象としてサクラの開花予想を発表している。当初、サクラの開花予想は、全国の気象台・測候所ごとに気温や降水量などの気象要素や花芽の重さを用いて官署毎に独自の手法で予想日を計算していた。 1996 年に気温の経過、今後の気温予報を使って気象庁本庁で一元的に予想を行うように改善した。

 なおソメイヨシノが生育できない地域では、ヒカンザクラ、エゾヤマザクラ オオヤマザクラを代替として観測しているが、沖縄・奄美地方のヒカンザクラは開花時期が 1 月頃のため、開花予想の対象とはしていない。

【山内豊太郎(2006年11月)】



図 サクラ開花日の平年値の等期日線図
気象庁ホームページより )

【 参考文献 】
気象庁編 :生物季節観測指針 第 3 版 』、p.24、 気象庁1985
気象庁ホームページ
http://www.data.kishou.go.jp/appmet/sakura.pdf
気象庁編 :異常気象レポート 2005 』、p.163 ~ 165、気象庁2005

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