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火星

 火星は赤道半径が3397kmで地球の約0.53倍,太陽系で地球の次に位置する惑星である.太陽からの平均距離は1.52天文単位(2.28×108km)であり,その公転周期は1.88年である.地球との会合周期は780日(2年と約50日)となるので,約2年2カ月ごとに地球に接近することになる.しかし,火星の軌道は離心率が0.0934とかなり大きな楕円(地球の離心率:0.0167)なので,接近する時の軌道上の位置によって地球-火星間の距離は2倍ほども変化する.2001年には6月22日にこの火星の地球最近現象が起きる.
 火星にはまた2つの衛星があり,内側のものを“フォボス”,外側のを“デイモス”と呼んでいる.大きさは最長径でそれぞれ25km,16kmほどで,大きな岩のかたまりのような形をしている.火星をまわる周期は,フォボスで0.319日,デイモスで1.262日である.火星の自転周期は1.026日なので,フォボスは速いスピードで西から東へ,デイモスはゆっくりと東から西へ運行する.
 ケプラー(1571-1630)がチコ・ブラーエ(1546-1601)の残した厖大な観測資料を整理し,その内の火星観測資料から火星の軌道が楕円であること,そして“惑星の軌道は太陽を焦点とする楕円である”とのケプラーの法則を確立したことはよく知られている.
 ある時刻の火星の位置は,その1公転周期(1.88年)後にはまた元の位置にもどるので,長期にわたる観測資料のなかから公転周期の時間差をもつ時刻の太陽と火星の黄経を調べれば地球の位置を割り出すことができる.次に,この地球の軌道を基に同様の考察を行なえば,図のように火星の太陽・地球に対する相対位置を確定することができるのである.このようにして次々と火星の多くの位置を定めると,火星の軌道はこれらをつらねた曲線として求まることになる.コペルニクス(1473-1543)の地動説とチコ・ブラーエの観測のみから推論された楕円軌道という結果は,次のニュートン(1643-1727)の力学の基礎となったのである.
 火星の表面に模様のようなものがあることが知られたのは1636年(フォンターナ)で,その後,数多くの火星の表面のスケッチが描かれた.それらの網目模様が生命体の構築した運河ではないかなどの論も出て,この星と生命体との関係は永く議論されてきたが,現在の火星探査機による調査で何が結論づけられるのか,興味のつきない惑星である.

(暦象年表 2001より)

参考(国立天文台HP)http://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/topics/tex/topics2001.pdf

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