1月1日あれこれ
現在,私達が使っている暦は,世界の多くの国々で使われている太陽暦法のグレゴリオ暦である.1582年,教皇グレゴリオ十三世の名において,ユリウス暦を改暦したものである.改暦はユリウス暦が4年に1回閏年を置いたので,平均の1年の長さが365.25日となり,実際の太陽年の365.2422日に比べて長いために,長い間にずれてきていた春分の日をもとの3月21日頃にもどすという宗教的理由があった.グレゴリオ暦は,4年に1回の閏年を入れるが,400年に3回閏年を抜くことで平均365.2425日となり,ほぼ実際の太陽年の長さと等しくなる.
ユリウス暦はB.C.46年に,ユリウス・カエサルによって制定されたが,年初もこの時公式にJan.(1月)1日と決められ,それが現在まで踏襲されているようだ.ユリウス暦のもとになった古ローマ暦は,Mar.の月から始まる10か月しか名がつけられておらず,残りの約60日は付加日だった.後にJan. Feb.の2か月の名が加えられたが,閏年には年末であったFeb.の月を1日増やすこと,月名が例えば,Sept.が7の意味であることはその名残である.後にローマ暦は,慣習上はMar.を年初に使い,公用年の年初には冬至近くのJan.が用いられたようだ.紀元前46年は445日にわたる大混乱の年であった.ローマ暦は太陰太陽暦の影響を受けており,この混乱はカエサルがB.C.45年のJan.1日を新月でスタートさせようとしたせいかもしれない.しかし,太陽年と朔望月の12か月は一致しないので,今になってみれば,1月1日は天文学的にも意味のない日になってしまった.
ところで,年初が1月1日になった理由は上に記したが,西暦元年1月1日は何曜日だったのだろうか.曜日に日・月・惑星名がつけられ,今のような形の曜日が用いられるようになったのはローマでは3世紀頃だと言われているので,実際に曜日が付されていたとは考えられないが,上で記した暦法を元にさかのぼってみよう.
1994年1月1日は土曜日である.この西暦をグレゴリオ暦と読み替えれば,グレゴリオ暦元年1月1日 ――もちろんこのような日付は歴史上存在しないが――は1994年1月1日までの閏年の数を数えることによって1993×365+483=727928日前となり7で割って曜日を確定すれば月曜日となる.
次に1582年10月4日までがユリウス暦で翌日をグレゴリオ暦の1582年10月15日として計算すれば(1993-1582)×365+100+78+1581×365+395+277=727930日前となってユリウス暦元年1月1日は土曜日となる.
ところがユリウス暦では閏年の入れ方を間違えた時期があり,アウグストゥス・オクタビアヌスが正したとされている.この調整がB.C.6年からA.D.7年まで閏年を置かないことで行なわれたとすれば,実際のユリウス暦元年1月1日は727929日前の日となって日曜日である.