水星・金星の日面経過
水星や金星のように,地球より内側で太陽のまわりをまわっている惑星には日面経過という現象が起こる.日面経過とは,幾何学的にみれば,太陽・水星または金星・地球がこの順に一直線上に並んで内合の状態になった時に,地球から見れば,太陽の光球面上を水星または金星がよぎっていく事象であるが,太陽・地球の作る黄道面に対して惑星の軌道面は傾いているから,惑星がちょうどこの両軌道面の交点(昇交点A,降交点D)近くにいる時でないと起こらない(図1).これら惑星の交点の黄経の変化は少ないので,地球がその交点近くを通過するのは毎年ほぼ同じになり,水星の軌道については昇交点通過は11月・降交点通過は5月,金星の場合にはそれぞれ12月・6月頃となる.これに内合の起こる時間間隔を考慮すれば予報ができることになる.
ちなみに,水星の日面経過「ロ.状況の数値」は地心からのものである.水星の日面経過は,日本時間で1993年11月6日に起こってのち,1999年11月16日,さらに2003年5月7日頃に,金星の日面経過は2004年6月8日頃に起きると計算される.
水星:赤道半径が2440kmで地球の約0.38倍,太陽に最も近い惑星で,太陽からの平均距離は約0.39天文単位(1天文単位は太陽-地球間平均距離).太陽のまわりをまわる公転周期は88日・自転周期は59日,公転周期と自転周期が3:2と簡単な整数比となっている.軌道傾斜角は7度とかなり大きい.この惑星の近日点の移動の異常さがアインシュタインの一般相対性理論で説明できたことでもよく知られている.
金星:赤道半径6052kmで地球の約0.95倍,太陽からの平均距離は0.72天文単位.公転周期は225日・自転周期は公転の向きとは逆で243日と測定されている.軌道傾斜角は3.4度.また太陽からの離角が小さく,しかも地球に近いので光度も明るく,宵の明星・明けの明星と呼ばれて親しまれている.