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2026年【序文】

 理科年表2026年版をお届けします.2025年の夏は記録的な酷暑で,観測史上最高気温という言葉を連日のように耳にしました.線状降水帯,ゲリラ豪雨による被害も深刻化しており,気象部では気温や降水量の記録に関する項目に数値の入れ替えが相次ぎました.一方,降雪の初日が早まったり,年間の降雪日数が増えたりしている地域も出てきています.環境部では,気候変動に関連する数値データをグラフで可視化しているページもございますので,ご覧ください.
 そのほかのおもな改訂内容ですが,暦部では新しい暦を採用,これに伴う変更点と,惑星・月の位置の差などを解説しています.天文部では惑星,衛星,準惑星,太陽系小天体,彗星等に関するデータを更新しました.太陽活動に伴う大きなフレアも掲載,重力波についても情報を追加・更新しています.トピックスではJAXAが開発した「小型月着陸実証機(SLIM)」と銀河の周囲に存在する「恒星ストリーム」を解説しました.物理化学部では同位体存在度委員会の勧告にあわせて,一部の原子量を更新しました.また,「原子およびイオンの電子構造」,「おもな放射性核種」,「原子核の磁気モーメントおよび電気四重極モーメント」も更新しております.特に「無機物質」は大幅な更新を行いました.「植物ホルモン」では農業において病害虫耐性の強化等への応用が注目されている“ジャスモン酸イソロイシン”を追加しました.地学部では日本のおもな山の標高と河川の流量を更新しました.全国水平地殻変動図では地震に伴う地殻変動が見てとれます.また,建築・土木・材料分野でも重要な「主要な岩石の熱伝導率」の表の追加と,「噴火した世界の火山」の改訂も行いました.生物部では「生物の系統」,「原核生物分類表」を充実させ,「真核生物分類表」を新たに追加しました.さらに,健康にかかわる「ヒト染色体の遺伝子地図」と「ヒト遺伝子座表」を充実させました.遺伝子座表を見ると細かく分かれた遺伝子が,がんや生活習慣病等に関連していることがわかり興味深いです.トピックスでは長寿命やがん耐性の生理学的特徴が注目されているハダカデバネズミを取り上げました.環境部では気候変動に加えて赤潮の発生件数,魚種別漁獲量の変化,外来生物,稲の作付面積と収穫量,温室効果ガス排出量,放射線の影響,一般産業廃棄物の発生量等のデータ更新を行いました.トピックスでは生命の本質を理解する最新研究「人工生命」について解説しています.
 以上,過去100年間と同様,理科年表2026も最新のデータやトピックスを取り 入れております.皆様のお仕事,研究,勉強などに広くお役立ていただければ幸いです. 

 2025年10月

国立天文台 台長 土居 守

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