第1回 第1冊『理科年表』のはじまり
此年表ハ一般理學ノ教育、研究及ビ應用ニ便スル爲メ毎年發行ス
ルモノデ、暦部及ビ天文部ハ直接東京天文臺ノ編纂ニ係リ、其他ハ次
ノ 諸氏ノ 監修ニヨツテ編纂シタモノデアル。
氣象 中央氣象臺長 理學博士 岡田武松
物理 東京帝國大學教授 同 中村清二
化學 同 同 松原行一
地理 同 同 山崎直方
地震 同 同 今村明恒
記念すべき第1冊の監修者、岡田武松(1874-1956)は、第4代中央気象台長(現在の気象庁)を務め、「気象学の父」と呼ばれた。中村清二(1869-1960)は、東京帝国大学(現在の東京大学)で長年にわたり実験物理学を講義し、日本の物理学発展の礎を築いた。松原行一(1872-1955)は、東京帝大に化学第四講座が新設された際に担当教官となり、明治時代に着任した最後の教官として長きにわたり活躍された。山崎直方(1870-1929)は、東京帝大に地理学科を創設、日本地理学会を設立して初代会長も務め、「日本近代地理学の父」と称えられた。今村明恒(1870-1948)は、過去の大地震の記録などから地震予知や防災に尽力し、「地震の神様」と讃えられた。日本の科学界の“父”や“神様”によって、理科年表は産声を上げたのでした。