第20回 理科年表といちばん長いつきあいなのは?
昨年(2025年)、理科年表は創刊から100周年をむかえ、12月14日には記念講演会を開催することができた。その準備のために資料集めをしていたとき、ふと「これだけの長い歴史の中でいちばん長く携わっているのは誰だろう?」と疑問が湧いてしまった。かくいう私も編集を担当して24年になるのだが、その間変わらずお世話になっている方々がたくさんおられ、数えてみたら23名もいらっしゃった。その方々をさらに遡って追跡してみたところ、最終的に2名のお名前を「昭和64年(1989)版」まで確認することができた(37年前!)。残念ながら「昭和63年(1988)版」以前は執筆者の掲載はなかったのでそれ以上は遡れなかったのだが、直接お尋ねしてみたところ、昭和63年版から参加されたという証言をいただくことができた。ただ、もっと昔に38年以上携わられた方もいらしたかもしれないので、いまのところ暫定である。
昔の理科年表を眺めていると、いまも変わらぬ図表が何十年も前から掲載されているのを見つけることができ、執筆者は代われど図表はずっと引き継がれているのを知って、なんだか感慨深い気持ちになる。そこで気がついたのだが、生物部が新設されたのは「昭和59年(1984)版」で、部門の巻頭を飾る「動・植物の基本型」のイラストは当時から掲載されていることがわかった。ということはもしや、イラストを描かれた方が最長なのでは?と思いお尋ねしてみた。以下はイラストレーターの安富佐織さんからのお話で、当時の経緯なども知ることができ貴重な資料なので、抜粋してそのまま掲載したいと思う。
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私が1980年前後の頃に2年間お邪魔していた当時都立老人研(現・東京都健康長寿医療センター研究所)で野間口隆先生にちょっと描いてみてと言われて描いたのが理科年表の生物の基本形の絵でした。大学院で私の指導教官だった江上信雄先生が東大退官記念の引き出物に生物部ができたばかりの理科年表机上版を配ったと記憶していますが、指折り数えてみると1984年3月だったはずですから、生物の基本形を描いたのは81年とか82年だったかもしれません。植物の基本形の絵の中で、エンドウかササゲの芽生えの絵で、資料を集めると反対のことが書いてあって、子葉の位置がわからないということがあったように記憶しています。それを植物の編者をしていらした当時都立大の和田正三先生に申し上げると、「それなら実際の発芽を見てみればいいよ」とおっしゃって、締め切りを延ばしてもらってご自身で発芽実験をしてくださいました。そのおかげで正しい発芽の絵を描くことができました。その時、実験結果と同じことが書いてあって正しかった資料は、前川文夫先生のお書きになった文章でした。和田先生が「やっぱり前川先生は正しかったなあ」と嬉しそうにおっしゃっていたのを覚えています。和田先生には学生時代植物学実習をご指導いただいたことがあるので、絵についてお電話してご相談できたのでしょうか。どうして和田先生に連絡がついたのか、思えば不思議ですが覚えていません。
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本の体裁はほとんど変わらないが、この100年の間に多くの専門家がタスキをつなぎながら、データを継続してくださっている。このタスキが途絶えないよう、しっかり引き継いでいきたい。




